『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』特大ヒットの裏で、高い評価を得ているアニメ映画がある。中国の漫画家でアニメ監督のMTJJと、彼が代表を務める北京のアニメ制作会社・寒木春華スタジオが制作した『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』だ。
日本語吹き替え版が11月7日に公開されると、11月7~13日の週間映画ランキングでは、人気タイトルに混じって第8位にランクインする大健闘を見せた(興行通信社提供)。第2週目に入ってから順位を落とす作品も多い中、11月14日・15日の映画ランキングでも第8位をキープしている。
もともと『羅小黒戦記』は、2019年9月から字幕版が日本で公開された。初めはミニシアターでの上映で、都内でも限られた場所でしか鑑賞することができなかった。その後、口コミで人気を集め、異例のロングラン上映へと成長。その反響を受けて、花澤香菜や宮野真守、櫻井孝宏といった豪華声優が出演する日本語吹き替え版が新たに制作され、全国のシネコンで公開されるに至った。
もしかすると、読者の中には「中国アニメ=低クオリティ」のようなイメージを持っている人もいるかもしれない。日本のアニメ産業において、長らく中国は下請けの役割を負っていた。作画に違和感を覚えたアニメのクレジットを見てみたら、中国人アニメーターらしき名前がずらりと並んでいた……という経験のあるアニメファンもいることだろう。
そんなイメージを持つ人が『羅小黒戦記』を鑑賞すれば、良い意味で期待を裏切られることは間違いない。同映画は、人間たちの自然破壊によりすみかを失った黒猫の妖精・シャオヘイの冒険を描いた物語だ。迫力のバトルシーンなどが目の肥えたアニメファンからも熱く支持されており、大手映画情報サイト「映画.com」のユーザーレビューでも5点中4.1点と高い点数がつけられている。
中国のアニメ業界に今、何が起きているのか。『誰がこれからのアニメをつくるのか? 中国資本とネット配信が起こす静かな革命』(星海社新書)の著者で、国内外のアニメビジネスに詳しいジャーナリストの数土直志氏は、このように解説する。