臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は高い有効性が示され話題になっている新型コロナウイルスのワクチンについて。
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新型コロナウイルス感染拡大の第3波が危ぶまれる中、アメリカの製薬会社で開発されているワクチンが90%以上という高い有効性を示したことが大きく報じられた。もしかすると、来年のオリンピック前には日本でもワクチンの接種が始まるかもしれない、と期待させるには十分なニュースだろう。
このワクチンを開発しているのは、新興製薬会社のモデルナと大手製薬会社のファイザーだ。両社のワクチンには「メッセンジャーRNA(mRNA)」という新しい技術が使われている。小学生の頃、学校の体育館でワクチンを打った記憶がある人も多いだろうが、それら従来の「BCGワクチン」は、病原菌やウイルスを弱体化させ、病原性をほぼ無くしたもの。接種することで体内に抗体を作り出し感染に備えることが出来るが、この方法は病原体そのものを体内に入れるうえ、培養にも莫大な時間とコストがかかる。
一方、mRNAワクチンは病原体そのものではなく、新型コロナウイルスの表面のたんぱく質を使って作られるため比較的安全で、ウイルスの遺伝子配列さえ分かれば素早く人工的にワクチンを作ることが出来るという。
ファイザーは、最終段階の臨床試験で予防効果が95%と発表。中間報告を行ったモデルナのワクチンも有効性は94.5%と高かった。ファイザーのワクチンはマイナス70~80℃で保存しなければならず、「そんな温度で保存できる冷蔵庫が日本のどこにあるんだ?」と話題になっていたが、モデルナのワクチンは2~8℃で30日間の保存も可能という優れものらしい。
94.5%と聞けば、かなりの安全性が担保されているという印象を受ける。100人にワクチンを打ったら94人には効くと思いがちだが、ここが落とし穴だ。発表によると、治験の対象者は3万人。半数にワクチンを投与し、残り半数には偽薬が投与された。だが、感染した95人のうち、ワクチンを接種していたのは5人、残る90人は偽薬を打っていたという。