誰もが夢見るものの、なかなか現実にならない夢の馬券生活。調教助手を主人公にした作品もある気鋭の作家で、「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆する須藤靖貴氏が、騎手頼みになりすぎて失敗する馬券購入についてお届けする。
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前回(『週刊ポスト』2020年11月20日号掲載)、Club JRA-Netの「騎手別成績一覧」を久しぶりに見て、ある有力騎手との相性の悪さに驚いたのだった。的中率、回収率が他の騎手と比べて極端に低い。自分の馬券ベタのせいに決まってはいるが、「この騎手、乗れてないんじゃない?」と八つ当たりし、反省した。
その流れで成績一覧をじっと眺めたのだった。やはり相性はあるんじゃなかろうか。37回買って的中ゼロって騎手もいるし。
いや、相性というより、自分の騎手への嗜好がわかるのである。
「こうした客観的データは、受け取る人間のセンスでゴミにも宝にもなる」と大学教授が言っていた(娘のリモート講義が耳に入ったのです)。データはネット競馬の賜物だ。ゴミにしてなるものか。
一覧表は上から投入金額の多い順に騎手名が並んでいる。田辺、松山、浜中、福永、幸がベスト5。続いて和田竜、ルメール、北村宏、戸崎、川田。以上がベスト10だ。
これはすなわち「須藤贔屓の騎手ランキング」。自分はそこそこの穴党だと思ってはいたが、人気どころの手綱に頼っているのだった。
各騎手の回収率はもちろん、購入レース数と的中レース数も明示されている。「おや」と思ったのは浜中騎手と和田竜騎手の差。購入数は113と107。しかし的中は浜中23回で和田竜は10回。回収率では浜中94%に対して和田竜は51%。開きがある。どちらの騎手にも良いイメージがあり、同程度の贔屓筋なのに。データを見なければ気づかなかった。
ゴミか宝か。「たまたまだろ」なんて切り捨てるようではゴミ収集車にダイビングだ。107回買って97回スカってんだから、きっと片思いなんだろう。