美術史家で明治学院大学教授の山下裕二氏とタレントの壇蜜という、日本美術応援団の2人が、日本の美術館の常設展を巡るこのシリーズ。2人は今回「JPタワー学術文化総合ミュージアムインターメディアテク」を訪れた。
山下:目の前に並ぶ巨大な鉱石はダイヤモンドです。
壇蜜:エッ……(息を呑んで)、こんなにも大きなダイヤを間近で拝めるなんて。
山下:世界最大のダイヤです。本物ならばとてつもない代物ですが、実際はフェイク。19世紀に作られた模型のコレクションです。
壇蜜:では、ジルコニアで作られているのですか。
山下:当時は練りガラスが主流でした。フェイクで価値がないと思いきや、この形状ではもうどこにも残っていない。人手へ渡ると加工され形が変わるのです。
壇蜜:ティアラなど装飾品としてリカットされてしまうから、原型を留めているのは貴重なのですね。
山下:インターメディアテクは東京大学が創学以来蓄積してきた学術文化財が常設展示され、他にも貴重な資料が揃っている。鳥類の標本は老田野鳥館や井の頭自然文化園などから寄贈を受け、山階鳥類研究所より寄託された昭和天皇のコレクションも収蔵しています。
壇蜜:素人目にも上質な剥製であることが窺えます。
山下:二度と採集することができない種の唯一無二の標本も多く、運がよければ剥製からDNAを採取できるケースもあるそうです。
壇蜜:驚いたのは、これだけ貴重な学術標本を入館料無料で見られることです。
山下:外注すれば何千万円もする大型な骨格標本を学生が組み立てるなどしてコストを抑えたそうです。
壇蜜:内製したとはさすが大学の学術施設ですね。
【プロフィール】
山下裕二(やました・ゆうじ)/1958年生まれ。明治学院大学教授。美術史家。『日本美術全集』(全20巻、小学館刊)監修を務める、日本美術応援団長。
壇蜜(だん・みつ)/1980年生まれ。タレント。執筆、芝居、バラエティほか幅広く活躍。近著に『結婚してみることにした。壇蜜ダイアリー2』(文藝春秋刊)。
◆撮影/太田真三 取材・文/渡部美也 衣裳/HUNDRED COLOR
※週刊ポスト2020年11月27日・12月4日号