『鬼滅の刃』ファンにもぜひ見てほしいと時代劇研究家が語る時代劇作品があるという。それは『十三人の刺客』だ。なぜこの作品が鬼滅ファンにおすすめなのか? コラムニストで時代劇研究家のペリー荻野さんが解説する。
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快進撃が続く映画『鬼滅の刃 無限列車編』。コミックも映画もコラボ商品も大ヒットし、その経済効果は2000億円ともいわれる。私も23日まで開催されていた京都南座の「『鬼滅の刃』×『歌舞伎の館』」展に出かけ、400年以上の歴史と多彩な演目(鬼退治や蜘蛛の化け物と戦う話もある)を持つ歌舞伎にも通じる「鬼滅」のパワーを実感してきた。
鬼に家族を惨殺され、唯一生き残った妹・禰豆子も鬼にされてしまった竈門炭治郎が、鬼を抹殺する集団「鬼殺隊」に参加し、厳しい闘いに挑む。炭治郎が出会う魅力的な仲間、強烈な鬼たち、熾烈な戦いの描写など、作品の魅力は数多いが、多くのファンは、「泣ける」と語る。本来、心優しい少年・炭治郎が、妹を人間に戻すという願いのために、鬼に刃を振るう。その切なさとともに、凶悪な鬼たちにも鬼となった「事情」があり、その哀しみが心を打つのである。
こうした現象を見て、時代劇研究家として感じたのは、『鬼滅の刃』ファン、特に若い世代は、時代劇で泣いたことがあったろうか?ということだ。『鬼滅の刃』は大正時代を舞台にしたダークファンタジーなので、江戸時代の話が多い時代劇とは雰囲気も、技も根本的に違うのだが、命を断ち切る切なさ、相手との関係性で泣ける時代劇はいろいろある。
11月28日にNHK BSプレミアムで放送される『十三人の刺客』もまさしく「泣ける時代劇」として有名な作品だ。
始まりは、明石藩の家老が藩主・松平斉継(渡辺大)の暴君ぶりを訴えて割腹自決したこと。斉継は将軍の弟。絶対権力の身内であることをいいことに多くの人を泣かせている。近く老中就任が決まっており、このままでは天下万民が苦しむと危惧した筆頭老中・土井(里見浩太朗)は、御目付役・島田新左衛門(中村芝翫)に斉継暗殺を指令。新左衛門が密かに集めた刺客たちは、中山道の宿場町を丸ごと改造し、斉継の大名行列を追い込んで死闘を繰り広げる。