9月に首相に就任した菅義偉氏は、かねてより「地方分権の推進」を掲げてきた人物。そうである以上、日本でも道州制が実現に向けて動き出す可能性は十分に考えられる。道州制には様々な区割り案がある。本誌は首相の諮問機関である地方制度調査会の区域例の「11道州」をもとに道州制導入後のシミュレーションを行なった。ここでは関西地方、中国地方がどうなっていくのか、分析してみよう。
■関西州(大阪、京都、兵庫、滋賀、奈良、和歌島)
関西で州都の有力候補は大阪とみられている。
「州都となる大阪が神戸を“吸収”するかたちで大阪一極集中が進みます。ただし、ウリの少ない奈良と和歌山の第二都市である橿原市や田辺市で人口減少が進み、地域経済が衰退して医療機関が減るなど行政サービスが縮小する可能性があります」(中央大学名誉教授の佐々木信夫氏)
思わぬブランド力の低下に見舞われそうなのが古都・京都だという。
「京都という一大ブランドが関西州でぼやけてしまう。それまで京都住民と知事、議会で決めていた観光などの政策も、大阪州都の州議会で決められてしまう。神戸も同様で、ブランド都市ほど道州制による独自色低下が心配されます」(立命館大学特任教授の村上弘氏)
■中国州(広島、岡山、鳥取、島根、山口)
かねてより岡山市も州都をアピールしているが、中国地方唯一の100万人都市・広島が州都となる可能性が高いとされる。
そうなると州都から離れる山陰側は深刻だという。
「島根県松江市や鳥取県鳥取市は新幹線が開通していない上に、広島からの高速道も整備されておらず、車で4~5時間かかる。交通網が整備されなければ人口が減少し、地域経済が衰退する可能性があります」(佐々木氏)
逆に期待大な地域もあるという。
「山口県では下関が北九州に近く、アクセスがいいので地価が上がるはずです」(不動産ジャーナリストの榊淳司氏)
※週刊ポスト2020年11月27日・12月4日号