安倍晋三・前首相が繰り返し訴えたのが「地方創生」だったが、菅義偉首相も「地方分権の推進」がスローガン。日本でも道州制が実現に向けて動き出す可能性は十分に考えられる。道州制には様々な区割り案がある。本誌は首相の諮問機関である地方制度調査会の区域例の「11道州」をもとに道州制導入後のシミュレーションを行なった。四国・九州おける明暗を分析してみよう。
■四国州(香川、愛媛、徳島、高知)
11道州の中でも厳しい経済状況が見込まれる。
「州都となる可能性が高い高松のみ地価が上がり、その他はほぼ下落が予想される。太平洋側の高知市や南国市は高松からの交通の便が悪く、有力な産業がない。徳島県は淡路島を介して明石海峡大橋と大鳴門橋で近畿と陸続きなので、地価をキープできそうです」(不動産ジャーナリストの榊淳司氏)
■九州州(福岡、大分、熊本、鹿児島、宮崎、長崎、佐賀)
州都選びの“番狂わせ”が起こる可能性がある。
「本命は人口で圧倒する福岡市ですが、州の北端が州都になることを懸念する意見もある。九州の中央に位置し、歴史伝統もあり州都に意欲を見せている熊本市が大逆転で選ばれる可能性があります」(中央大学名誉教授の佐々木信夫氏)
熊本市が州都なら州全体が潤うかもしれない。
「九州は人口でもGDPでも『日本全体の1割経済』と呼ばれますが、九州の真ん中の熊本を州都にして総合力を発揮すれば、周辺の大分、宮崎、鹿児島の地域経済も活性化する可能性がある。これまでの福岡一極集中が解消されて、“九州州全体”が勝ち組になる可能性があります。州ならではの税制など自治権を発揮して、福岡空港、北九州港をハブとして韓国、インド、中国、ロシアなどとつながりを深めていけば『環東シナ海経済圏』の中心を担うようになるかもしれません」(同前)