秋法相は、早ければ12月第1週目に法務部の「検事懲戒委員会」を開くと見られている。7人の委員の過半数を法相が選べるので、ここで解任処分が決定する見込みだ。
この措置には尹検事総長も黙ってはいない。11月25日にはソウル行政裁に職務停止の執行停止を申し立て、法的に争う姿勢を見せており、また、韓国の検察関係者も一部反発の動きを見せている。朝鮮日報(11月26日付)によると、〈大検察庁の研究官らは25日、会議を開き、「秋美愛法務部長官の指示は違法で不当な措置だ」とする声明を出したのに続き、釜山地検東部支庁の検事らも全国の検察庁で初めて、末端検事による会議を開き、同様の立場を表明した〉という。
検事らは「違法で不当な措置だ」と訴えているが、そもそも法相に検事総長を解任する権限はあるのか。元朝日新聞ソウル特派員でジャーナリストの前川惠司氏はこう答える。
「検事の懲戒制度はありますが、こういう形での運用は想定されていないはずで、職権乱用に当たるのではないかというのが争点になるでしょう。実際、秋法相の今回の措置は常軌を逸している。
なぜここまでやるのかというと、ある疑惑が持ち上がっているからと考えられます。秋法相の息子は、2017年の兵役中、病気休暇で家に帰ったあと部隊に戻らず、秋氏の補佐官らが軍に電話をして、休暇延長の扱いにさせたという疑惑が出ていて、今年9月にソウル東部地検は国防部を家宅捜索しています。本来なら脱走扱いで軍法会議にかけられるところを、圧力をかけて救ったという疑惑です。捜査から息子を守りたい母親の一念が、尹氏への恐怖と憎悪となって解任へと暴走しているのではないか」
この件はすでに韓国で報道されているので、もし尹氏を解任すれば、秋法相も大きなイメージダウンを免れないが、それでも強行しようとする姿勢には執念を感じざるを得ない。