増加傾向にあると言われる日本国内の離婚だが、実は離婚件数自体は2017年がピークでそれ以降はやや減少しながら平行線をたどっている。しかし、熟年離婚は別だ。厚労省の「人口動態統計月報年計(概数)」2018年度版によれば、同居期間25年以上のカップルのみ離婚件数が増えているのだ。
離婚するなら若い方が再出発しやすい──そんな社会通念に反して熟年離婚を選んだ「元妻」たちだが、その声は一様に明るい。
なぜ彼女たちはそんなに幸せそうなのか。そこには熟年離婚を成功させる“黄金ルール”があった。
「離婚を選んで本当によかった。夫のことを考えなくて済む、自由って本当に素晴らしい」
そう言ってほほえむのは25年間連れ添った夫と2019年に離婚が成立した小学校教員の浅野たか子さん(50才・仮名)。
元夫は大学の先輩で、夫の卒業後まもない1995年に学生結婚をして長女と次女に恵まれた。しかし次女出産を機に仕事を辞めて家庭に入った途端、「おれが稼いだ金を無駄遣いするな」「専業主婦は早く寝られていいよな」など、夫の嫌みに悩まされるようになった。
次女の小学校入学を機に職場復帰してからも収まらず、夫婦の将来に強い不安を抱いたたか子さんは16年目の2011年に夫に離婚を切り出した。
「すでに私との関係をあきらめていた夫は話を淡々と聞き、『次女が成人するまでは親の責任を果たそう』と言いました。私も折れて、成人までの7年間で離婚の準備を進めることになった。光熱費と食費は折半し、教育費は養育費代わりに夫が負担。さらに夫の名義だった自宅は離婚するまで夫がローンを返済し、離婚後は私が家の権利をもらって残りのローンを返すことにしました。この間に夫も離婚してから住む家を探しました」(たか子さん)
晴れて離婚が成立したたか子さんは、住み慣れた家で悠々自適の生活を送っている。
夫婦・家族問題研究家の池内ひろ美さんは「熟年離婚においてまず大切なのは住む家を確保すること」と話す。
「50代以上が急にひとり暮らしをすることになっても、なかなか賃貸住宅を借りるのは難しいのが現状です。実家でも夫が購入した不動産でもいいですが、“終の住処”を確保することが非常に重要になる」(池内さん)
その場所は、住み慣れた土地ほど望ましい。
「親しくしている友人や知人が多い地域であることも重要です。熟年離婚すると実家のある地域に帰る人も多いですが、老いた親は頼りにならないことも多い。遠くの親戚よりも近くの友人という言葉があるように、何かあったときに助けてくれる存在が多くいる場所を選ぶべきでしょう」(池内さん)