社会の先行きが不透明であること、いつ職を失う事態になるかもわからないことなどから、安全策として副業を考える人が増えている。しかし、そもそも海外では複数の仕事を持つことは当たり前のことで、副業を許可しない企業は逆に珍しいのに、日本はいまだ立ち遅れていて、このコロナ禍においてさえ、多くの企業が副業の可否が論じられるレベルに留まっている。日本企業が副業許可に二の足を踏むのはなぜなのか。また副業がもたらす本当のメリットは何なのか、創業時から社員に副業を勧めているという(株)エンファクトリーCBO、清水正樹さんに話を聞いた。
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エンファクトリーは、オンラインストアやDX支援のほかインターネットを利用して「もの」「ひと」「こと」をつなぐ多種多様なサービスを提供する会社です。
会社の人事ポリシーは「専業禁止‼」で、社員の副業を強く推奨しています。「禁止‼」といっても、皆が副業しなくてはいけないわけではなく、希望する社員は起業してもいいし、複数の仕事を持っても一切かまいません。どんな業種でもOKです。会社としては社員の副業を全面支援する、という姿勢です。
こう話すと多くの方から「そんな状態で、本業の仕事がおろそかになったり、離職が進んだりするのでは?」という質問を受けます。しかし、現状約6割の社員が何らかの副業をしている状態で、創業以来9期連続で平均15%の増収を重ねていますし、離職もほとんどありません。
私自身、2013年から複数の仕事を掛け持つ「複業」を始めました。私の場合は新たなサービスを考えて事業を作り上げていくのが好きで、現状続けている「ハリネズミと触れ合えるカフェ」「ECサイト向けメッセージカード事業」などの仕事のほかにも多くのチャレンジをしてきました。その中には失敗して途中で撤退したものもありますが、今後もさらに多くのサービスを創造していくつもりです。
そこで今度多くの方から受けるのは、「そんなに自分で仕事を作っているのに、なぜ本業の会社にい続ける必要があるの?」という質問です。
その答えは、「会社にいるからこそ得られるものがあるから」。当然ですが、ビジネスにはある程度の規模を持つ会社にしかできない事業があります。そうした事業に参加できるのは、その会社に所属しているからにほかなりません。私の周りにも、本業の給料より副業の収入のほうが多くなっているにも関わらず本業を辞めない人が少なくありません。やはり、「本業あってこそ今の自分がある」という認識があるからではないでしょうか。
そして、本業で得たものは副業に活かすことができ、また、副業で得たものを本業に活かすこともできる。本業と副業にはシナジーが成り立つのです。