「認知症は治せない」──そう思っていないだろうか? 2025年には高齢者の5人に1人が患うといわれる新たな“国民病”に対する研究が、急速に進んでいる。
「軽度認知障害(MCI)の症状が出ていた私の患者が新薬の治験に参加したのですが、一定程度の効果を実感しています」
認知症専門医で神奈川歯科大学教授の眞鍋雄太氏が語る。
「60代になり物忘れや日中ぼんやりすることが多くなった方が、治験後にはひとりで海外に行くなど普通の生活を送れるまでに回復しました」
アメリカ大手製薬会社バイオジェンとエーザイが共同開発している「アデュカヌマブ」は、世界初のアルツハイマー病の根本的な治療薬として注目されている。
「アルツハイマー病は脳にたんぱく質『アミロイドβ』が蓄積して発症します。アデュカヌマブはこれを除去し、認知機能を改善することが期待されています」(前出・眞鍋氏)
アミロイドβはたんぱく質「リン酸化タウ」を誘導して脳内で記憶を司る「海馬」を侵食するため、記憶力の低下が起こる。それを除去する治療薬はこれまでなかった。
同剤は現在、アメリカの食品医薬品局(FDA)で販売承認の審査が行なわれており、2021年3月に最終判断が下される予定だ。
「認知症は治らない」が常識だった時代は終わりを告げつつある。ただし、この新薬でも進行してしまった認知症を治すのは難しい。
「アミロイドβが溜まり過ぎていると効果は期待できません。早期発見・早期治療が基本です」(前出・眞鍋氏)
それには認知症の症状を把握し、早く異変に気付くことが大切だ。