第3波の到来に各国が動揺しながら対策に血眼になる中、中国は涼しい顔をしている。中国国家衛生健康委員会の発表によれば、11月29日の新規感染は18件。そのうち中国国内での感染はわずか3件で、そのほかは海外から持ち込まれた事例だった。
人口13億人超というスケールで、しかも、新型コロナウイルス“発祥の地”にもかかわらず、ここまで封じ込めるとは、中国恐るべし。中国情勢に詳しいジャーナリストの富坂聰さんが解説する。
「日本との決定的な違いは、経済再生とコロナ対策を両立させなかったこと。すなわち、いったん経済を完全に止めて、徹底的にコロナを封じ込めてから経済活動に入った。対策後は感染が起きても小規模なものとなり、抑え込みやすくなったのです。中国のコロナ対策で、見習うべきところは非常に多い」
日本では「3密」回避が打ち出されたが、中国の方針は「四早」だったという。
「『四早』とは、早期発見・早期隔離・早期診断・早期治療です。社会主義国家の中国では、議会を通さず法律に近い規制を作れる。武漢封鎖前後だけで30本くらい、1日1本のペースで“新しい規制”が発令された。制度の是非はさておき、国家規模で早期に『四早』を徹底できたのは大きかったでしょう」(富坂さん)
日本では任意の「マスクの着用」だが、中国各省や市では義務化しているところが多いという。上海の日系企業で働く中国人女性が話す。
「上海では空港や駅、バスなど公共の場所でマスク着用義務が定められていて、改札や出入り口に係員が立ってチェック。マスクなしで乗るのは不可能です。至るところで検温もある。ビデオ映像で自動的に検温するものやゲートをくぐる電子検温なので特に意識しませんが、街全体、あらゆる場所で検温体制は万全です」
スマホも感染防止に一役買う。中国ではコロナ前からキャッシュレス化が進み、老若男女、子供までもQRコード決済がほとんど。現金はもちろん、クレジットカードすらレジに出さず、「非接触」が当たり前だ。
「運転免許証や身分証などもスマホに搭載されるため、子供や高齢者も各自のスマホを持つようになりました。いま中国では、病院やホテル、会社、学校などに入る際に、『通信ビッグデータ行程カード』や『健康コード』など、スマホで表示される証明書やQRコードを提示するよう求められます。これは移動履歴や健康状態報告などのスマホのデータをもとに、感染リスクを分析するものです。
QRコードは、危険度が高い方から順番に、赤、黄、オレンジ、緑に色分け。色はリアルタイムで変わるため、家の近所や職場で感染者が出るとすぐ赤になる。上海の空港で感染が発覚したときには、そのエリアにいた人すべてのQRコードが赤色になり、隔離の対象になったそうです」(前出・中国人女性)