在宅勤務の広がりによってスーツ需要が減り、大手紳士服チェーンは軒並み苦しい経営を強いられているが、代わってオジサン世代でもビジネスカジュアル(ビジカジ)スタイルを取り入れる人が増えている。中でも安価で上下揃えられるユニクロは圧倒的人気だ。ファッションジャーナリストの南充浩氏が、“全身ユニクロコーデ”でも野暮ったく見えないビジカジスタイルの作り方についてアドバイスする。
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30代半ば未満の若い男性の方々からはちょっと想像もできないかもしれませんが、完全なるビジネススタイルでもなく、完全なるカジュアルスタイルでもない極めて中途半端な「ビジカジスタイル」というものを作るのは、20年くらい前まではなかなか苦労しました。
おそらく、ビジカジスタイルに一番親和性が高いのは、アイビースタイルやプレッピースタイルではないかと思いますが、そういうアイビー・プレッピー向けアイテムというのは、まあまあ高い価格のブランドでしか扱われていませんでした。
ファッションビルや一部の百貨店ブランド、大手セレクトショップあたりが得意としたアイテムでしたが、1アイテム当たりの価格は、シャツやポロシャツ、セーター類などの中軽衣料と呼ばれるジャンルですら、だいたい1万円を越えており、1万円を下回るのはTシャツくらいでした。
スーツやジャケット、コート、防寒ブルゾンなどの重衣料と呼ばれるアイテムは安くても3万円、平均価格が5万円といったところ。少し背伸びをすれば10万円オーバーになりました。そのため、2000年代半ばまでは、ビジカジスタイルを揃えるのにお金がかかり、よほどの愛好家か、金持ちの道楽かみたいな感じまでありました。
高コスパなユニクロのビジカジアイテム
しかし、今はユニクロ、無印良品などの低価格ブランドが完璧な出来ではないものの、昔の低価格ブランドに比べるとコスパも高いビジカジ向けアイテムを発売しており、選び方さえ間違わなければ、20年前の半額以下の金額でビジカジスタイルが揃えられる良い世の中になりました。だからアパレル業界は客単価低下に悩んでいるともいえるのですが……。
これまでユニクロはベーシックな服というスタンスを強調してきましたが、2000年代半ばからデザイナーズコラボを開始し、高感度なイメージも追求し始めました。
ユニクロのデザイナーズコラボが注目されるきっかけとなったのが、2009年秋冬にスタートしたジル・サンダー氏とのコラボライン「+J」でした。2011年秋冬で終了しましたが、今年11月に9年ぶりに復活を遂げました。
復活したラインは2009年を大きく上回る盛り上がりを見せ、発売日朝から通販サイトのサーバーは落ち、各ユニクロ店舗には開店前に長蛇の列ができ、入店まで数時間待ちの状態が続きました。発売開始から数日後には完売商品も出てしまい、転売サイトには定価の何倍もの値段が付けられて多数出品されています。
またこの「+J」と並ぶユニクロのデザイナーズコラボの看板ラインといえば、クリストフ・ルメール氏とのコラボ「ユニクロU」です。もうすっかりユニクロではおなじみとなっています。少し色や柄に個性があるのが、JWアンダーソンとのコラボで、こちらも今秋も引き続き展開されています。