自主規制が進む最近のテレビドラマとは違い、1980年代に隆盛を誇った「2時間ドラマ」では、ヌードや濡れ場などのお色気シーンは当たり前だった。名だたる女優たちがそこで艶やかさと美を競ったのである。『週刊ポスト』(12月7日発売号)では、伝説の2時間ドラマ濡れ場傑作選を特集しているが、同特集で作品解説している阪南大学の大野茂・教授(『2時間ドラマ40年の軌跡』著者)に、改めて2時間ドラマの「お色気シーン史」を聞いた。
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家政婦、湯けむり、トラベルミステリー、美女、明智小五郎など、1977年にスタートした『土曜ワイド劇場』から2時間ドラマの伝説は生まれました。当時は映画が下火になり、その監督やスタッフがこぞってドラマを撮りだした頃で、出演する女優たちも映画と同じような気持ちで挑んでいました。
同じ2時間ドラマでも、『火曜サスペンス』は主婦向けだったのに対し、土曜ワイド劇場は男性向けということで、女優の露出度は今では考えられないほどでした。当時の芸能事務所では、“脱がせ上手な土曜ワイド”という裏キャッチコピーが囁かれていたほどで、プロデューサーも「エンタメ要素としてエロを入れる」と明言していました。1990年代半ばまで、各局合わせて週8本もの2時間ドラマ枠があり、20%ほどの視聴率も珍しくありませんでした。その後、トレンディドラマが流行るまで、ドラマの王道はこれでした。
TBSでは、子供たちに大人気の『8時だョ!全員集合』が21時に終わると、そのまま『ザ・サスペンス』が始まり、冒頭から女優の入浴シーンが流れてお茶の間が気まずい空気に包まれる……という経験をした家庭も多かったはずです。
ザ・サスペンスで濡れ場に挑戦して飛躍した女優はたくさんいました。キャンディーズ出身の田中好子はもちろんですが、朝ドラ主演女優のイメージが抜けなかった秋野暢子は、『あるフィルムの背景』(1983年)という作品で、ヤクザに犯されてブルーフィルム(今でいうAV)に売られてしまう女性を演じたことで脱皮しました。“お嫁さんにしたい女優No.1”だった竹下景子も、『ソープ嬢モモ子』シリーズ(1982年)で演技派女優の道を歩き始めます。