そう簡単には治せないと思われているのが認知症。しかし、初期の段階で発見し、いち早く治療すれば、認知機能の回復も望めるのだという。そして、認知症の兆候は、目・鼻・耳・口の異変から感じ取れる。一体どういったサインがあるのか。
【鼻のサイン】腐臭に気付かない
まずは「嗅覚」だ。日本認知症予防学会理事長で鳥取大学医学部教授の浦上克哉氏が語る。
「アルツハイマー型認知症と嗅覚には密接な関係があります。多くの場合、嗅神経から衰えが始まります」
浦上氏によると、嗅神経の障害は認知症を発症する数年前から始まるという。嗅覚の変化に早めに気付ければ、認知症の早期発見につながる。
「ところが嗅覚の変化は、本人にはあまり自覚がない。秋になっても金木犀の香りに無頓着、食べ物の腐敗臭に気付かない、といった異変を家族が見つけることが大切です」(前出・浦上氏)
一方、「嗅神経は鍛えることができる」と浦上氏は続ける。
「嗅神経は再生能力が高い。私が推奨しているのはアロマを使った嗅覚のエクササイズです。アロマオイルを焚いて匂いを嗅ぐことで嗅神経を刺激し、細胞を活性化させる。認知症の発症を遅らせる効果が期待できると考えています」
【目のサイン】かすむ・まぶしい
視覚にも重要な手がかりがある。『認知症の取扱説明書』の著書がある眼科医・平松類氏が解説する。
「視力が低下すると、目から取り入れる情報が少なくなって脳への刺激が減り、社会的な孤立が深まるなどして認知症を悪化させることがあります」
高齢者が注意したいのは、「老眼」「白内障」「緑内障」の3つだ。
「老眼については、まずは眼鏡の調整が基本です。少なくとも3年に一度は買い換えたい」(前出・平松氏)
歳を重ねると白内障を発症しやすくなるが、「目のかすみなどを感じたら早めの受診を」と平松氏。
「白内障を治療した人の60%に認知機能の改善がみられたという研究があります。白内障の兆候である目のかすみなどを感じたら、目をこすらない、紫外線を避けるなどを徹底しながら、眼科に相談しましょう」