国際情報

トランプもバイデンも目を背ける「中国を育てたアメリカ」

トランプ氏もかつては「習近平とは親しい」とアピールしていた(AFP=時事)

トランプ氏もかつては「習近平とは親しい」とアピールしていた(AFP=時事)

 バイデン政権の発足に向け、アメリカはようやく通常の準備期間に入った。トランプ大統領は依然として選挙結果に納得していないが、各州の裁判所も司法省も「選挙で不正があった」というトランプ氏の主張を明確に否定しており、もはや流れは変わらない。世論を味方につけたいトランプ氏は、バイデン氏が大統領になれば中国の脅威に対抗できないと訴えているが、果たしてそれは本当なのか。バイデン氏のファミリーが中国ビジネスで財を成したことは事実である。ニューヨーク在住ジャーナリスト・佐藤則男氏は、アメリカと中国の深く長いビジネスのつながりを指摘する。

 * * *
 AP通信は、トランプ政権の国家情報長官であるジョン・ラトクリフ氏の発言を報じている。「中国は第二次世界大戦以降、アメリカと自由世界に最大の脅威を与えている。中国政府は、経済的、軍事的、技術的にアメリカと世界を支配するつもりである。経済スパイのやり口は『強盗、複製、置き換え』である。中国は、アメリカ企業の知的財産を奪い、技術を複製し、世界市場でアメリカ企業に取って代わろうとしている」と述べた。

 もちろん、この発言に対して中国政府は反発している。トランプ政権は、大統領選挙運動中に反中レトリックを強化してきた。ファミリー・ビジネスで中国と関係が深いバイデン氏を攻撃する目的だったが、バイデン氏は中国に関して、「国際貿易ルールを遵守していない。中国企業に不公平な補助金を与え、アメリカの技術革新を盗んでいる」と述べて、中国寄りであるとの批判をかわそうとしている。

 大統領選挙の副産物のひとつは、アメリカ国内に広がった反中ムードである。来年1月に発足するバイデン政権は、中国と敵対することを求められてスタートを切ることになる。筆者の住むニューヨークには57万人の中国人が住んでいるが、アメリカ人も日本人も中国人も、特に憎しみ合って暮らしているわけではない。正直に言うと、面倒な対立が起きたという気持ちでニュースを見ている。

 しかし、アメリカと中国の経済的な対立は、起きるべくして起きたとも言える。1980年代なかば、筆者がまだビジネススクールを卒業し、起業したばかりの頃の昔話である。仲の良かった金融コンサルティング会社を経営するJ氏から招待状が届いた。J氏が中国の大手銀行のアメリカ本社社長に就任したので、その戦略プレゼンテーションに出席してほしいという内容だった。出席してみると、そこで説明されたのは、AT&T、IBMなどの大企業はすでに中国に進出し、光ファイバー敷設などの巨大インフラ投資を進めており、この市場は確実に成長するから投資をしてほしいという主旨だった。

 筆者は中国市場の成長については非常に有望だと思ったが、共産主義国家とのビジネスには疑問も感じたので率直に質問した。「その計画で設立された合弁業が中国政府によって国有化されたらどうなるか」と問うと、J氏はあいまいな答えしかしなかった。それで筆者は自分のクライアントに投資を勧める気持ちを失ってしまった。要するに、参加しているアメリカ企業もそれはわかっていて、中国の発展を初期段階で手助けし、その間に利益を確保して、そのあとに国有化されてもいいという考えだったのである。

関連キーワード

関連記事

トピックス

“教育虐待”を受けたと主張する戸田容疑者の家庭環境とは── (時事通信社)
「母親から数万円の振り込み断られた」東大前駅切りつけ事件・戸田佳孝容疑者(43)の犯行動機に見える「失われた世代」の困難《50万人以上の高齢者が子に仕送りの推計データも》
NEWSポストセブン
府中刑務所の食事見本。ふりかけや、佃煮らしき小鉢が見える。2024年2月報道向け公開時(AFP=時事)
暴力団幹部が定食屋で「勘弁してくれよ」と言った事情 目の前にはアミの佃煮、たくわん、塩辛など「ご飯のおとも」がずらり
NEWSポストセブン
秋篠宮と眞子さん夫妻の距離感は(左・宮内庁提供、右・女性セブン)
「悠仁さまの成年式延期」は出産控えた姉・眞子さんへの配慮だった可能性「9月開催で眞子さんの“初里帰り”&秋篠宮ご夫妻と“初孫”の対面実現も」
NEWSポストセブン
1998年にシングル『SACHI』でデビューした歌手のSILVA(ブログより)
《“愛の伝道師”として活躍した歌手SILVAの今》母として『子どもの性教育』講師活動、マイクを握れば「投げ銭ライブ」に「2200円の激安ボイトレレッスン」の出血大サービスも
NEWSポストセブン
性的パーティーを主催していたと見られるコムズ被告(Getty Images)
《フリーク・オフ衝撃の実態》「全身常にピカピカに」コムズ被告が女性に命じた“5分おきの全身ベビーオイル塗り直し”、性的人身売買裁判の行方は
NEWSポストセブン
大食いYouTuber・おごせ綾さん
《体重28.8kgの大食いタレント》おごせ綾(34)“健康が心配になる”特殊すぎる食生活、テレビ出演で「さすがに痩せすぎ」と話題
NEWSポストセブン
美智子さまが初ひ孫を抱くのはいつの日になるだろうか(左・JMPA。右・女性セブン)
【小室眞子さんが出産】美智子さまと上皇さまに初ひ孫を抱いてほしい…初孫として大きな愛を受けてきた眞子さんの思い
女性セブン
宮城野親方
《元横綱・白鵬の宮城野親方「退職情報」に注目集まる》一度は本人が否定も、大の里の横綱昇進のなかで「祝賀ムードに水を差さなければいいが…」と関係者が懸念
NEWSポストセブン
出産を間近に控える眞子さん
眞子さん&小室圭さんがしていた第1子誕生直前の “出産準備”「購入した新居はレンガ造りの一戸建て」「引っ越し前後にDIY用品をショッピング」
NEWSポストセブン
不倫報道の渦中にいる永野芽郁
《永野芽郁が見せた涙とファイティングポーズ》「まさか自分が報道されるなんて…」『キャスター』打ち上げではにかみながら誓った“女優継続スピーチ”
NEWSポストセブン
子育てのために一戸建てを購入した小室圭さん
【眞子さん極秘出産&築40年近い中古の一戸建て】小室圭さん、アメリカで約1億円マイホーム購入 「頭金600万円」強気の返済計画、今後の収入アップを確信しているのか
女性セブン
カジュアルな服装の小室さん夫妻(2025年5月)
《親子スリーショットで話題》小室眞子さん“ゆったりすぎるコート”で貫いた「国民感情を配慮した極秘出産」、識者は「十分配慮のうえ臨まれていたのでは」
NEWSポストセブン