累計感染者が15万人を超え、重症者も増加の一途を辿る新型コロナウイルス。治療薬やワクチンの開発状況が日々報じられているものの、依然として治療法の“正解”は確立されていない。感染患者は現状、どんな薬を投与されているのか。
今年7月に感染したジャーナリストの伊藤博敏氏(65。感染時は64歳)が振り返る。
「私の場合は37度台後半の発熱があった程度で体調はそれほど悪化しなかったが、年齢に加えて高血圧、肺がんの既往歴ありで“重症化リスク”が高いため、即入院となりました。
治療の過程で投与する可能性のある未承認薬については患者の同意が必要と告げられ、副作用などが細かく書かれた同意書を読んで、最終的にはサインしました。その未承認薬は、新型インフルの治療薬『アビガン』と喘息治療用のステロイド薬『オルベスコ』でしたね。入院翌日に体調が回復したのでいずれの薬も投与しませんでしたが、もし私が同意しなかったり、病院や担当医が違えば別の薬が提示されていた可能性はあります」
厚生労働省『新型コロナウイルス感染症診療の手引き・第3版』によると、新型コロナ発生から約1年が経った現在、日本で使われている治療薬は8種類ある。
うち国内承認を得ているのは、エボラ出血熱の治療薬「レムデシビル」と抗炎症ステロイド薬「デキサメタゾン」の2種類だけだ。
伊藤氏の言うように「アビガン」や「オルベスコ」は未承認薬のため、使用は医師の判断と患者の同意に委ねられる。
コロナ治療の最前線で働く愛知医科大学病院の後藤礼司医師(循環器、感染症)が語る。
「未承認薬はどれも確かな薬効を示すデータがない。いまはまだ試行錯誤の段階だというのが正直なところです」