「新型コロナウイルスの脅威は肺炎」。そんな単純な話は、いまや昔だ。世界各国の研究によると、新型コロナウイルス感染症には100種を優に超える「後遺症」があるという。しかも、それは重症者、無症状者に関係なく発症しうるというのだ。本当の恐怖は感染後にやってくる──。
感染者数が日本とはケタ違いの海外では、後遺症についての研究が進んでいる。まず心配されるのが、精神面への影響だ。
カナダの首都、オタワにあるブリュイエール研究所の研究によると、新型コロナから回復した患者の22~24%に心的外傷後ストレス障害(PTSD)、26~33%にうつ病、38~44%に全般性不安の症状がみられた。回復者のなかには「自殺衝動」が生じた者もいた。
退院後1か月の患者を対象にした韓国・ソウル大学病院の調査では、10人に1人がうつ病とPTSDを発症した。
「中国の研究では、回復者の6割に睡眠障害がありました。さらに半数が不安に陥り、恐怖心を有するとの結果でした」(医療経済ジャーナリストの室井一辰さん)
英インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究結果はさらにショッキングだ。新型コロナから回復した8万4000人以上を対象に思考能力テストを行ったところ、呼吸器の症状が深刻化して人工呼吸器をつけた20~70才の思考力が、平均で10才老化していた。
研究チームは、「新型コロナ感染は慢性的な認知力の低下という後遺症をもたらす可能性がある」と警鐘を鳴らす。
回復者が直面する後遺症は1つだけとは限らない。今年8月、感染から5か月を経て女性セブンの取材に応じた、米ニューヨーク在住でアーティストのハンナ・デービスさんはこう語った。
「回復後、ほぼ毎日のように熱があり、頭痛や耳鳴り、筋肉痛などが消えませんでした。腕や手の感覚が消えて頭はボーっとした感じが強く、立っているだけで心拍数が急上昇することもあった。嗅覚にも異常があり、実際には肉を焼いていないのに、肉が焦げたにおいがすることもあった」
それから約3か月、ハンナさんが現状を語る。
「発症から8か月経っていくつかの後遺症はだいぶ収まりましたが、記憶障害と血液凝固がここひと月ほどでぶり返し、いまも神経内科、内分泌科、循環器科など複数のクリニックに通っています。いずれの後遺症も決定的な原因がはっきりせず、対症療法にとどまっています」(ハンナさん)