年末の申し込み期限に向けて申請が増える「ふるさと納税」。菅義偉首相はことあるごとに自らが発案者であると胸を張り、反対する官僚たちに「ぜったいにやるぞ」と啖呵を切ったと、自著『政治家の覚悟』で明かしている。だが、この政策はもともと、元官僚の発案だった。ノンフィクション作家の森功氏がレポートする。(文中敬称略)
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ふるさと納税自慢はもはや聞き飽きたという人も少なくないだろう。高額返礼品や金持ち優遇への批判も巻き起こった。が、当人はどこ吹く風。今なお怪気炎を上げる。
「近い将来、(年間寄付総額)1兆円を目指す」
ふるさと納税は第一次安倍晋三政権の2007年6月、総務大臣だった菅義偉が、「地方創生」の旗印を掲げて打ち出した。都市部の住民が地方自治体へ寄付してふるさとを応援する、と謳っている。もっとも、2000円の自己負担を除き、寄付金のほぼ全額が従来納税している自治体や国から戻ってくる。単なる税の移動制度であり、おまけにそこへ豪華な返礼品がついてくる。まるで高級なカニや牛肉を2000円で手にするネット通販のような感覚で、ブームになった。
地方活性化を謳いながら、政策をよくよく見ると、制度そのものが富裕層に有利な税体系になってきた。金持ち優遇批判が絶えない所以だ。
当人が自慢するそのふるさと納税は、独自に編み出した政策ではない。元をたどれば、福井県知事の西川一誠による発案で、そこに総務大臣として初入閣した菅が飛びついたわけだ。が、実は西川の直伝でもない。
「菅さんにふるさと納税を授けたのは、元財務官僚の高橋洋一さん(65)でしょう。全国自治会で西川さんがふるさと納税について発言し、2006年に日経新聞の『経済教室』に西川さんが書いた。それを見つけた高橋さんが菅さんに提案したはずです」