コロナ危機が深まる中で政治家たちの発言は変節を繰り返すばかりだ──。
吉村洋文・大阪府知事は感染第1波の対応で名を上げたが、いまや大阪は重症病床の運用率86.7%と医療崩壊の危機に直面している。
「医療崩壊の定義はない。本来治療を受けるべき人が、(病院の)廊下、道端で並んだり、治療が受けられない。僕はそれが医療崩壊だと思っている」(11月24日囲み会見)
患者が道端に並ぶまでは医療崩壊ではないと強弁しているのだ。
かたや小池百合子・東京都知事は、西村経済再生相と責任のなすりあいを演じている。
今年3月、小池氏が「都市の封鎖、いわゆるロックダウンなど強力な措置をとらざるを得ない状況が出てくる可能性がある」と都民に感染対策の必要性を訴えたことについて、西村氏がコロナ対応を検証している民間組織に「小池発言で緊急事態宣言が遅れた」と責任転嫁した。
すると小池氏はクラスターやロックダウンという言葉は、「国の専門家会議の議論で出た言葉を引用したまでで、私の言葉というわけでは全くない」と言い出したのだ。
あれだけ国民の危機感を煽っておいていまさら「私の言葉じゃない」というのだからあ然とさせられる。政治学者の後房雄・愛知大学教授が指摘する。
「感染症の拡大は不確定で予測がつかないから、政治家も先を見誤ることはある。その場合は国民に間違いを説明して方針を変えればいい。Go To キャンペーンも時期尚早であれば、感染拡大した段階ですぐに一時中止を決断すればよかった。それが政治家の責務を果たすことになる。
しかし、現在の政治家の発言を聞くと、決して己の判断の非を認めない、発言や方針を変えてもなぜ誤ったかを説明せず、かつての発言はなかったかのように振る舞う。それは国民の安全と安心のためではなく、自分の保身を第一に考えて言葉を選んでいるからです」
その結果決断が遅れ、国民の危機が深まっているのである。
※週刊ポスト2020年12月18日号