ライフ

鎌田實医師 コロナに耐え忍ぶ“らしくない”生き方のススメ

諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師

諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師

 昨年、テレビの討論番組に出演した萩生田光一・文部科学大臣が、大学入学共通テストに導入される英語の民間試験をめぐり「身の丈に合わせて頑張ってもらえれば」と発言し、格差を容認するのかと批判を浴びて発言を撤回した。「身の丈」に合わないことにチャレンジしてこそ、可能性が広がるという面もある。諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師が提唱する、身の丈を気にしない「らしくない」生き方のススメ。

 * * *
 アメリカ大統領選挙は白熱した戦いだった。「どっちになっても変わらない」なんて冷めた声も聞かれる日本に比べ、だれを支持するのかはっきりと表明するアメリカのほうがずっと健全なように思う。まさに大統領選は、全米が沸いたお祭りだと思った。

 ただ、気になることもある。ある世論調査で、支持候補が落選した時に「暴力は正当化される」と答えた人が20%くらいいた。共和党支持者だけでなく、民主党支持者も同じくらいの割合で、暴力を肯定している人がいる。分断の深刻さを感じ、愕然とした。

 それにしても、トランプ大統領はなぜ、ここまで人気があるのだろうか。ぼく自身の好き嫌いは別として、絶大な支持者を集めているのは、ある意味「らしくない」政治家だったからではないか。型破りとか、意外性とかいうものは、とてつもなく魅力的に見えるものなのだ。だが、この4年間の評価は結果を見れば歴然だと思う。「らしくない」トランプに勝ったのは、よくも悪くも「らしい」政治家のバイデン氏であった。

意外性だけでなく、神髄を見極める目が必要

 いろいろな人と交流するなかで、時々、「なぜか好かれる人」に出会う。例えば、公務員なのにマニュアルやルールを少し拡大解釈して、本当に困っている人に手を差し伸べたりする。“放し飼いの公務員”みたいな人だ。みんなに頼りにされ尊敬を集めている。こういう生き方っていいなと思う。

 寿司屋らしくない寿司屋というのもそうだ。神宮前にある「おけいすし」の大将は、まさにそんな感じ。たたずまいは柔和だが、カウンターの端から端までピシッと気を配っていて、一分の隙もない。なんだか武術の達人のようにも見える。

 この大将がテンポよく、次々と驚きのつまみを出すのだ。マグロの横隔膜、タコのほうじ茶柔らか煮、生タコの吸盤、ホヤ、からすみ、なまこの卵巣のくちこ、にぎりが出る前にノックアウトされてしまう。しかも、一個一個が絵になっていて、手のひらに乗る小さな芝居を観るように心が弾むのだ。

 政治家も、だれとは名前は挙げないが、いつもニュートラルな視点を失わない人がいいと思っている。アメリカほどではないが、日本でも保守とリベラルが明確に分かれているように思う。このままいくと、より極端な右へ引っ張っていく人や、極端な左へ引っ張っていく人が出てくる。これを防ぐためにも、右らしくない右とか、左らしくない左というような人が、国民の3割ぐらいいることが大事なように思う。

 既存の主義主張にこだわりすぎず、本当に国民のためになることは何なのか、神髄を見極めることができる政治家が出てくることを期待したい。

関連記事

トピックス

2024年末に第一子妊娠を発表した真美子さんと大谷
《大谷翔平の遠征中に…》目撃された真美子さん「ゆったり服」「愛犬とポルシェでお出かけ」近況 有力視される産院の「超豪華サービス」
NEWSポストセブン
新政治団体「12平和党」設立。2月12日、記者会見するデヴィ夫人ら(時事通信フォト)
《デヴィ夫人が禁止を訴える犬食》保護団体代表がかつて遭遇した驚くべき体験 譲渡会に現れ犬を2頭欲しいと言った男に激怒「幸せになるんだよと送り出したのに冗談じゃない」
NEWSポストセブン
警視庁が押収した車両=9日、東京都江東区(時事通信フォト)
《”アルヴェル”が人気》盗難車のナンバープレート付け替えで整備会社の社長逮捕 違法な「ニコイチ」高級改造車を買い求める人たちの事情
NEWSポストセブン
地元の知人にもたびたび“金銭面の余裕ぶり”をみせていたという中居正広(52)
「もう人目につく仕事は無理じゃないか」中居正広氏の実兄が明かした「性暴力認定」後の生き方「これもある意味、タイミングだったんじゃないかな」
NEWSポストセブン
『傷だらけの天使』出演当時を振り返る水谷豊
【放送から50年】水谷豊が語る『傷だらけの天使』 リーゼントにこだわった理由と独特の口調「アニキ~」の原点
週刊ポスト
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
《英国史上最悪のレイプ犯の衝撃》中国人留学生容疑者の素顔と卑劣な犯行手口「アプリで自室に呼び危険な薬を酒に混ぜ…」「“性犯罪 の記念品”を所持」 
NEWSポストセブン
フジテレビの第三者委員会からヒアリングの打診があった石橋貴明
《離婚後も“石橋姓”名乗る鈴木保奈美の沈黙》セクハラ騒動の石橋貴明と“スープも冷めない距離”で生活する元夫婦の関係「何とかなるさっていう人でいたい」
NEWSポストセブン
原監督も心配する中居正広(写真は2021年)
「落ち着くことはないでしょ」中居正広氏の実兄が現在の心境を吐露「全く連絡取っていない」「そっとしておくのも優しさ」
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
〈山口組分裂抗争終結〉「体調が悪かろうが這ってでも来い」直参組長への“異例の招集状” 司忍組長を悩ます「七代目体制」
NEWSポストセブン
休養を発表した中居正広
【独自】「ありえないよ…」中居正広氏の実兄が激白した“性暴力認定”への思い「母親が電話しても連絡が返ってこない」
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(時事通信フォト)
「うなぎパイ渡せた!」悠仁さまに筑波大の学生らが“地元銘菓を渡すブーム”…実際に手渡された食品はどうなる
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された(左/時事通信フォト)
広末涼子の父親「話すことはありません…」 ふるさと・高知の地元住民からも落胆の声「朝ドラ『あんぱん』に水を差された」
NEWSポストセブン