誰もが夢見るものの、なかなか現実にならない夢の馬券生活。調教助手を主人公にした作品もある気鋭の作家で、「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆する須藤靖貴氏が、陣営(馬主さん、厩舎、生産牧場)と騎手を仲介するエージェント(騎乗依頼仲介者)に着目してレースを見直し、どのように馬券検討に生かすかについてお届けする。
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同じ厩舎からの多頭出しは珍しくはないし、馬主さんの愛馬が揃って同レースを走ることも多々ある。それは馬柱を見ればすぐに分かるわけだが、隠れている重複もある。同じエージェント(以下age)の騎手が重なるレースだ。
騎手は勝てる馬に乗りたい。ageは仲介馬の勝利でインセンティブが得られる。両者の利益は一致するから、まあそれほど重複はないだろうとレース結果を眺めはじめた。ageを介さない騎乗もあるだろうが、いやはや、びっくりするほど多いのだった。馬券検討に役立つかもしれないと面白くなってやめられなくなり、2020年4月から11月半ばまでのデータを取ってみたのである。
リーディング上位騎手を含んだ13のグループ(G)。新馬と未勝利を除く平場の1244レースを振り返ると、934レースに重複があった。3場開催時の地方ではあまり重ならず、関東、関西が混み合うのである。手作業で時間を要したものの、おかげで騎手のage分けがほぼ暗記できた。
やはり目立つのは「ルメール、武豊、浜中、泉谷」の豊沢信夫氏G。このうち2人揃ったのは184レースもある。看板騎手だから共演は当たり前なのかもしれない。さらに3人出馬が46回、4人揃ったレースも7つあった! 6月27日阪神12Rではルメール、武豊、浜中のワンツースリー(単勝人気は1人、6人、3人)。泉谷は11着(13人)。勝つ馬は1頭だけ。勝ち鞍を喰い合っているようにも見えるわけだが……。
「福永、岩田親子、小崎」の小原靖博氏Gも、2人揃い140回、3人が34回、4人勢ぞろいが1回と気を吐いている。