巨人の日本シリーズ2年連続4連敗の衝撃以降、今年のシーズンオフは「パ高セ低」の話題が席捲している。『週刊ポスト』(12月14日発売号)では、パ・リーグの名選手たちが、もしセ・リーグでプレーしていたら、もっと多く名球会入りしていたのではないか、という大胆な問題提起をしている。登場した評論家や“当事者”たちの意見は割れたが、往年のスターに関して言うなら、「いつからセパの差がついたのか」という点も考えなければならないだろう。
現在のセパの差を語る時、必ず出てくるのが「速球の差」「スイングの差」だ。パ・リーグではピッチャーは150キロを超える速球をバンバン投げ込み、バッターはフルスイングで勝負を挑むのに対し、セ・リーグではコースをついたり変化球でかわす投球が目立ち、バッターはコツコツ当てにいく場面が多いという指摘である。どちらにも違う野球の醍醐味があるとはいえ、交流戦や日本シリーズでは明らかにパ・リーグのほうが分が良いことを考えれば、全力投球、フルスイングの意味は大きい。
そうした「力の野球」を生んだ要因のひとつがDH制だと言える。ピッチャーが打席に立たないから打線に切れ目がなくなるし、ピッチャーは投球に専念できる。投手交代の戦術勝負の要素は減り、力と力の対決が増えるのは当然だ。パ・リーグがDH制を導入したのは1975年。すでに45年以上の歴史がある。スポーツ紙デスクが解説する。
「DH制を導入した年に、パ・リーグ全体の平均打率は前年の.247から.254にアップしました。それまで投手が立っていた打席に野手が立つのだから打率が上がるのは当然だが、もう少し細かく言うなら、ベテランになって守備力が落ちて出場機会が減ってしまった主砲クラスの選手をDHで再びレギュラーとして使えるようになったことが大きかった。DHによって投手の代わりに出てきた選手は“9番手の野手”ではなく、主砲クラスだったのです。当然、打線は大幅に強化されました」
これだけ聞くと、投手にとっては受難の時代になったように思えるが、必ずしもそうではなかったという。体力温存できるとか、マウンドに集中できるということはもちろんだが、それだけではないという。
「思い切ってインコース攻めができるようになりました。DH制がなければ、しつこくインコースを攻めたり、万が一、当ててしまったりしたら、自分が打席で報復される可能性があります。しかし、打席がないならそんな心配せずにビシビシ攻められる。投球の幅は広がるし、打者に向かっていく姿勢も出てくる。それを打つために打者も気持ちや技術を磨いていくから、どちらにとっても好循環だった。
それから、戦術的な投手交代が減ったことで、投手は完投しやすくなった。導入前年はリーグ全体で197完投だったが、導入した年は302完投と大幅に増えている。試合全体を考えて投球を組み立てるタイプの投手にとっては、むしろ投げやすくなったでしょう」(同前)