日本の四季は消えつつあるのか。気象庁は長年、季節ごとの開花や生き物の初鳴きを観測する「生物季節観測」を続けてきたが、11月にその9割を廃止すると発表した。例年、冬が近づき空気が乾燥するといつも私たちを悩ませる、あの厄介なウイルスの気配も今年はパッタリと消えた。
おなじみの「インフルエンザ」の話である。
昨年2019年の11月第4週の患者数は、全国で約3万人だった。2018年は約5000人、2017年、2016年はおおよそ1万人。年によって流行に多少の差はあるものの、冬には毎週1万人ほどの人が高熱や腹痛、咳や悪寒に悩まされてきた。
ところが2020年、同じく11月第4週の患者数は、日本全国でたったの46人。例年のざっと100分の1以下だ。もはや「インフルエンザは消滅した」といってもいいほどだ。
廣津医院院長で、日本感染症学会のインフルエンザ委員会メンバーでもある廣津伸夫さんが語る。
「12月に入ると、私のクリニックには、どんなに少ない年でも週に数人はインフルエンザの患者さんが来ました。しかし、今年はまだゼロです」
目下、世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルスとは関係があるのか。
「新型コロナもインフルエンザも『飛沫感染』します。今年ほど、マスク着用やうがい・手洗い、『3密』回避などの感染対策が徹底的にとられたことはかつてない。新型コロナ対策が、インフルエンザの流行防止に奏功したのでしょう」(廣津さん)
内科医で医療ガバナンス研究所理事長の上昌広さんは、「海外からの渡航制限のため、国内にインフルエンザウイルスが持ち込まれていないことが大きい」と分析する。
「インフルエンザは世界中を地球規模でグルグル回るものです。北半球が夏の間は、冬の南半球で流行する。それが日本の冬のタイミングで、どこからか持ち込まれて広がりますが、今年は“鎖国”状態が続いているので、ウイルスが日本に入ってこなかった」
もう1つ考えられる理由は「ウイルス干渉」だ。