この冬、中村勘九郎(39才)が初めて声優に挑戦。演じたのは、『劇場版ポケットモンスター ココ』に登場する幻のポケモン・ザルードだ。人間の子供を見つけ、“自分の子”として育てるという、 新たな親子の愛を描いた作品で、勘九郎が思いを馳せたのは、 父・勘三郎さんと、2人の息子たちだった──。
撮影時、ジャケットを羽織っていても感じられるたくましい肩と胸板に現場からワッと歓声があがると、中村勘九郎は途端に照れた表情を見せ、“肉体改造”の秘密をこっそり明かした。
「これはね……役作りではなくリバウンドなんです(笑い)。2019年放送の『いだてん〜東京オリムピック噺〜』(NHK大河ドラマ)で日本人初のオリンピック選手・金栗四三さんを演じるにあたり、精悍な体形を保つために撮影中はずっと炭水化物や糖質をセーブしていました。作品を撮り終えて、いざ自由に食べてもいいよとなると止まらなくなってしまって……。気がついたら、元のサイズよりも1サイズ上がってしまいました」
大好物は白米。撮影後の炭水化物解禁でそのおいしさを再確認したと、うっとり。そこには中村家のルーツも隠されていた。
「もともと牛丼やカレーなどごはんが進むメニューが大好物で、家でカレーを作ってもらったら4日間は毎食カレーを食べています。大鍋にたくさん作ってもらって1食は家族みんなで、残りは小分けに冷凍してぼく専用のカレーに(笑い)。
うちの父(十八代目中村勘三郎)も太りやすい体質で食べすぎないように制限していましたが、おじやが大好きでね。わが家では鶏の水炊きのシメは雑炊なのですが、子供の頃、夜中に水が飲みたくなって台所へ行くと父がパジャマ姿で食べていたものです。
気がつけば、いまではぼくも同じことをしています。家族に見つからないようにこっそり土鍋からすくうおじやのうまいこと(笑い)。ちょっと冷えて味がしみている感じがたまらない。“父があの日に食べていたのはこれか!”と思いながら、やっちゃいますね」
父は向こうへ行ったいまも守ってくれている
ふとした会話から父との思い出がよみがえると、子供に戻ったようないたずらっぽい表情を見せた。そんな勘九郎の最新作は歌舞伎ではなく、映画。それもアニメ作品だ。12月25日公開の『劇場版ポケットモンスター ココ』では森を舞台に、ポケモンに育てられた少年・ココ(上白石萌歌)とココを育てた幻のポケモン・ザルードの親子愛を描き、勘九郎は森の掟に反してココを育てることを決めた“とうちゃんザルード”として、声優に初挑戦している。
「父と子の物語なので、自分の父のこともすごく想いながら大切に演じました。ザルードは森の中で泣いているココを見つけて、“自分が育てなければこの子は死んでしまう”と父になる決心をするのですが、育てていくうちにココへの想いがどんどん膨らんで、大きな愛で包むようになる。その姿に自分も父から同じように守ってもらっていたんだな、向こうへ行ったいまも守ってくれているんだなと感じました」