医療崩壊で急患の受け入れが困難になれば、救急医療への影響は甚大だ。突然、七転八倒の激痛に襲われ救急車を呼んでも「受け入れ先ゼロ」という事態が起こりかねない。手遅れで死に至るケースもあれば、長時間、苦しみにのたうち回ることもあるだろう。どんな病気で、どのような「痛み」が生じるのか──。
「仲間のパッティングを見ていたら、急にバリバリという音が背中に響いたんです。その直後に経験したことのない激痛が背中から全身をドーンと駆け巡り、七転八倒しながら、『痛い、痛い、死ぬぅ!』と叫びました」
顔を歪めて振り返るのは落語家でタレントの笑福亭笑瓶(64)。2015年暮れ、ゴルフ場で倒れた笑瓶はドクターヘリで緊急搬送された病院で、大動脈の一部が何らかの原因で引き裂かれる急性大動脈解離と診断された。
「人によっては大手術が必要とのことでした。幸い、僕は自然治癒しましたが、発作中はあまりの痛みに『どうせなら青空を見ながら逝こう』と死を覚悟した。もっとも、痛すぎて目も開けられませんでしたが(苦笑)」
このように長い人生のなかで、不意に「痛すぎる病気」に見舞われることがある。激痛症状が現われやすいのが腹部だ。新潟大学名誉教授の岡田正彦医師は、急性上腸間膜動脈閉塞症を挙げる。
「腸を固定し支えている腸間膜の動脈が急に詰まる病気で、血流が途絶えた腹部に激痛が走ります」
発症すると腸が痙攣し、内臓を搾り取られるような痛みに襲われる。患者は悲鳴を上げながらのたうち回り、救急搬送中に失禁することもある。
「放置すると脱水症状や激しい嘔吐でショック状態に陥り、死に至るケースもある。発症後は直ちに受診することが必要です」(岡田氏)