2020年に話題になったドラマを振り返ると、何といってもまず上げられるのが韓国ドラマ『愛の不時着』だろう。韓国では2019年末からテレビで放送開始され大ヒット。日本でも、今年2月から動画配信サービスNetflixでの配信がスタートするや、ステイホームの影響もありたちまち人気に火がついた。年末恒例の『現代用語の基礎知識』選「ユーキャン新語・流行語大賞」でも「第4次韓流ブーム」という言葉と共にトップテンにランクインされるほどの社会現象に。
Netflixでは12月の現在でもなお連日、視聴ランキングの上位に入り、今年配信し最も多くTOP10入りした作品の第1位に輝いた。さらにアジアの他の国やアメリカなど世界的ブームにもなっている中、ついに世界初の『愛の不時着展』が、来年1月8日(金)から、東京を皮切りに大阪・福岡・名古屋で順次開催される。
日本では、芸能人やスポーツ選手など大物から若手までがこぞってハマりぶりをアピールしたことも、このブームに一役買った。
「夢中で見た」(テリー伊藤)、「全話一気に見ました」(黒柳徹子)、「やばいすよ。ボロボロ泣いて、後半」(EXILE岩田剛典)、「仕事中も『愛の不時着』が気になってしまい、空から誰か降ってこないかなーと空ばかり見上げてしまう今日この頃の俺なのでした」(EXITりんたろー。)
などと、それぞれが思い思いに熱い胸の内を語っている。どんなドラマなのか、おさらいしてみよう。
韓国の財閥令嬢でファッションブランドのCEOを務めるユン・セリ(ソン・イェジン)は、パラグライダー中に竜巻に巻き込まれ北朝鮮の軍事境界線に不時着してしまい、北朝鮮の軍人リ・ジョンヒョク(ヒョンビン)に助けられる。
セリはジョンヒョクの家に身を寄せ、ジョンヒョクやその部下らとともに韓国へ帰る方法を探るうち、やがて2人は惹かれあうようになる。財閥令嬢とはいえ、婚外子ゆえに幼少期に継母に捨てられたつらい過去を持ちながら、自らの力で会社を成功させてきたセリ。ジョンヒョクは北朝鮮人民軍のエリート将校だが、かつては国際的なピアニストで、軍人だった兄の事故死により自らも軍人となった。
心に大きな傷を負いながら生きてきた2人がファンタジックに出会い、自分以外の守るべき人のために、時にシリアスに、時にユーモラスに、そしてミステリアスに命を懸けて運命に挑み、愛を知って人間的にさらに大きく成長していく。
数ある韓国ドラマと何がそんなに異なるのか、その見どころを韓国エンターテインメント・ナビゲーターの田代親世さんは次のように語る。
「お話はまさに現代におけるロミオとジュリエット。SNSで世界中が瞬時につながる世界に生きているのに、今、別れてしまったら連絡を取る手段がない関係性がそこにあります。限りなく丁寧に現代を描きつつ、私達の常識では考えられない日常に、日本だけでなく世界中が驚きとともに共感したのでしょう」
北と南の男女の愛を描くといえば、映画『シュリ』(1999年)の大ヒットもあったが、本作にはコメディ要素もたっぷりあって、20年前の作品とはまた雰囲気も違う。
「『愛の不時着』は、ラブコメとサスペンスが混在し、胸キュンのあとに、映画『JSA』(2000年)にも通じる相容れない切ないシーンがあったり、その緩急のバランスが絶妙です。
韓国ドラマだけに、幾重にも重なっている縁を紐解いていく面白さがあり、ファンタジーでしか描けないような設定ながら、男女の感情の機微と、ジョンヒョクの部下たちや北朝鮮の村の女性たちなど愛すべきサブキャラたちのエピソードが丁寧に描かれています」(田代さん)
ドラマの中で北朝鮮で出会う人たちも、生き生きと描かれ人間的な味を出している。