11月19日、国立がん研究センターは、2010年から2012年にがんと診断された患者約14.8万の症例を集計した最新の「部位別5年生存率」(別掲表参照)を発表した。治療成果は年々上がっており、全部位平均の5年生存率は、68.6%と10年前の64.1%から上昇した。特に、男性患者が女性の6倍と多い食道がんや、日本人男性の死亡原因1位の肺がんは治療技術の急速な進化もあり、5年生存率が10年前の同調査から大幅にアップした。
ステージ別にみると、例えば大腸がんはステージIVの5年生存率が10ポイント近く上がったが、胃がんはダウン。ともにI期の5年生存率が100%に近く、早期発見・早期治療で根治も可能ながんであるが、何が明暗を分けたのか。
『コロナとがん』(海竜社刊)の近著がある、東京大学医学部附属病院放射線治療部門長の中川恵一医師が語る。
「がんの転移が関係している可能性がある。大腸がんも胃がんも、肝臓に転移することでステージIVになります。しかし大腸がんは転移が肝臓に留まるのに対し、胃がんは全身に広がるケースが多い。同じステージIVでも死亡リスクがまるで違います」
「ステージ0」が勝負
全ステージで生存率が最も低い膵臓がんは、いくつかの光明が見えてきた。医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が指摘する。
「東北大学などが臨床試験を進める『術前化学療法』は、手術による体力低下が起きる前に、負担の大きい抗がん剤治療を済ませてしまう治療法で、死亡リスクを28%減少させました。
また12月から世界に先立って日本で保険適用の治療が始まった『光免疫療法』は、がん細胞に付着した薬をレーザー光で照射し、ピンポイントの薬剤効果を目指します。いまはまだ頭頸部がんなど特殊ながんでしか承認されていませんが、今後は膵臓がんに応用されることも期待されます」