もし、あの選手がパ・リーグではなくセ・リーグにいたら……。日本シリーズでソフトバンクがセ・リーグ最強の巨人に2年連続で4連勝したのを見て、勝敗以上にセとパの力の差を感じた野球ファンも少なくないかもしれない。
振り返れば、強打者揃いのパ・リーグに在籍していたがために、名球会入りの条件である200勝を阻まれた投手も多いのではないか。
西武一筋21年、2015年に引退した西口文也(182勝)には常に「不運」の2文字がつきまとう。
「西武で長くローテーションを張り、安定感は抜群だった。奪三振率も高かったが、被本塁打率が高くあと一歩で勝ちを逃すことが多かった。ノーヒットノーランを達成目前で4回も逃したことも、“一発に泣いた”ことをよく表わしている」(スポーツ紙記者)
相手がフルスイングのパの強打者でなかったら──そう思えてくる投手だ。
同じ西武には、“怪物”松坂大輔(40、170勝)もいる。もしパやメジャーではなく、全盛期にセで投げていたら……と考えるのは欲張りすぎか。
オリックスと阪神に所属したサウスポー・星野伸之(176勝)については議論が分かれる。
「最速130キロのストレートと70キロ台のスローカーブで打者を翻弄した球史に残る“軟投派”です。セならもっと活躍したかもしれないが、初球からブンブン振ってくるパだから凡打を量産できたという見方もある。全盛期にセで投げる姿を見たかった」(同前)
阪急ブレーブスなどのエースとして歴代2位の350勝をあげた野球評論家・米田哲也氏の同世代にも、「もしセで投げていたら」という投手がいるという。
「やはり南海の杉浦忠(187勝)ですね。西鉄の稲尾和久との投げ合いで、だいぶ勝ち星を損している気がします。あのアンダースローはセの打者もキリキリ舞いさせたでしょう。
同じくアンダースローでは、阪急でチームメイトだった足立光宏(187勝)も素晴らしかった。ストレートで押す山田久志と対照的に、投げる球全てが変化した。とくにシンカーは絶品です。日本シリーズ男と呼ばれてV9時代の巨人に立ちはだかったことを考えても、セならもっと記録を残したのではないか」