もしコロナに感染してしまったら、大切なのは感染をそれ以上広げないようにすること──そうは分かっていても、行動が伴わない人もいるようで……。
「検査で陽性になって会社には報告しましたが、困ったのは小学校2年生の長男のこと。私が住む自治体では、子供が『濃厚接触者』になったら保護者が学校に報告するというルールになっていますが、まだ陽性でもないのに『コロナがうつる』といじめられたり、学校を長期間休まされたりするのが心配で、あえて報告しませんでした。
苦渋の決断でしたが、幸いにして、長男は検査で陰性だったので事なきを得ました。それでも、もしも“隠ぺい”が学校やほかの保護者にバレたらと考えると、身の縮む思いです」
苦しい胸の内を明かすのは、11月に新型コロナウイルスに感染した、都内在住の40代男性会社員Aさんだ。
第3波が猛威を振るう中、もはやいつどこで誰が感染してもおかしくない。そうなったとき、誰にどこまで感染を報告すべきだろうか。それが同居の家族だったら、たまにしか会わない親族だったらどうだろう。Aさんのように、感染を公にすることによる「2次被害」を恐れる人は少なくない。実体験の声を通して、“カミングアウト”の際に生じるトラブルや解決法を探る。
症状があっても検査拒否する人
12月15日、「大阪コロナ重症センター」の運用が始まった。第3波の「防波堤」の役割が期待されるが、全国的な感染拡大と医療体制の逼迫は容赦なく進んでいる。12月11日には、神奈川県の軽症・無症状者向けの宿泊療養施設に入所していた50代男性が容体急変で死亡した。新型コロナは基礎疾患のある高齢者が高リスクとみなされてきたが、50代で基礎疾患のなかった男性の死亡により医療現場の緊張感が増した。
検査で陽性が判明した軽症患者は、医師が「入院の必要がない」と判断した場合、自宅もしくは宿泊施設での療養をすすめられる。現在、東京は自宅療養、宿泊療養合わせて2000人を超えている。
いつ誰もが感染する可能性がある中で頭を悩ませるのは「感染したことをどこまで公にするのか」という問題だ。本来、病気はプライベートなものであるが、新型コロナのような感染症は、「人にうつす/うつした」可能性があるため、感染を公表して周囲に注意を促す必要がある。
一方で感染が判明すると入院や療養を強制されて働けなくなったり、冒頭のAさんが恐れたように本人や家族などが差別されるリスクがある。ゆえに現在は症状が出ても検査を拒否する人や、陽性がわかっても「できるかぎり黙っておこう」と感染を隠す人が目立つようになった。
そこで重要なのは、もし自分や家族が感染した際に「どれだけの人に、どこまで伝えるか」を事前にしっかり考えておくことだろう。11月に感染が発覚して自宅療養となった都内勤務の20代男性Bさんが悩んだのは「仕事関係」への伝達だった。