「すべての女性が輝く社会づくり」を唱え、2015年には女性活躍推進法を公布しされたが、現実には貧困率や安い賃金など、女性ということ以外に理由が見当たらない格差が解消できないまま今に至っている。そして、新型コロナウイルスの感染拡大によって彼女たちはさらに追い込まれている。ライターの森鷹久氏が、厳しい状況に追い込まれている女性たちについてレポートする。
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11月に発表された今年10月の女性の自殺者数が前年同月比で2倍になった、という衝撃的なニュースが報じられた。そして12月10日に発表された11月の全国の自殺者数は5か月連続で前年同月を上回り、男性が前年同月比8%増だったのに対し、女性は同19%増と、やはり女性が厳しい状況に追い込まれていることを示している。
女性の地位、について論じられる時「女性は甘やかされすぎ」だとか、男性に対する逆差別が横行しているなどという声が必ずあがる。さらに、女性への差別そのものがないのではないか、作られた幻想ではないか、そう結論づける人もいる。だが、このニュースによって「女性の生きづらさ」は確かに存在するということが、数字を伴って現れたといえるだろう。
今回の不幸な数字が出てしまった原因は多岐にわたる複雑なものだが、要因の一つにあるのが「女性の仕事」が危機に晒されているという事実がある。そして、この「女性の仕事」がいつまで経っても社会にとって「補助」的なものとしてしか捉えられず、かと思えば「補助」的な女性の仕事がなくては、社会や家庭があっという間に破綻してしまうようになっている、その歪な仕組みが浮かび上がってくる。
「20代、30代と子育てに追われ、何か手に職をつけたいと思って始めた仕事。コロナ以降の売り上げは前年比の90%以上減。お店をやればやるほどお金が出ていくような状況に耐えきれず、9月に閉店しました」
こう話すのは、東京都多摩地域にあるネイルサロンのオーナー・西山文子さん(仮名・50代)。大学卒業後、大手メーカーに勤務したが、程なくして社内結婚、出産直前に寿退社した。専業主婦になるつもりはなかったが、子供を保育園に入れようにもどこも満杯で預けられず。近くに子供の面倒を見てくれる親族もおらず、子育て前提、子育て優先の西山さんを採用してくれる会社もない。パートタイマーなどをして子育てをし、二人の子供が高校を卒業したタイミングで再度就職活動を開始したという。しかし……。
「すでに40才を超えて、経験らしい経験がない私を採用してくれる会社はゼロでした」(西山さん)