この年末年始、唐突なGo To キャンペーン停止で全国の観光、飲食業界は大打撃を受けている。菅義偉・首相にはさぞや不本意な年越しだろう。「感染対策と経済の両立」を掲げたGo To の一時停止に追い込まれたうえ、感染拡大は止まらない。政権発足時は70%台だった支持率が3か月で40%台に急落した。
看板政策の失敗は政権基盤を揺るがせている。菅首相を脅かす存在は、官房長官として7年半仕えた“旧主”の安倍晋三・前首相だ。
体調不良で退陣したが、菅政権が感染対策に有効な手を打てないとみるや政治活動を再開。細田派、麻生派、岸田派の旧主流3派を中心に「ポストコロナの経済政策を考える議員連盟」を旗揚げし、自ら会長に就任した。
「菅さんは総理になると安倍政権を支えていた議員を重用する者と干し上げる者に選別し、分裂を誘って弱体化を図っている。麻生派は河野太郎、細田派では西村康稔、萩生田光一、下村博文らが重用された。干された冷や飯組が結束して安倍さんを担ぎ上げた格好だ」(細田派ベテラン議員)
いまや安倍氏に対しては、「再々登板」を求める声まで上がっている。麻生太郎・副総理も、盟友である安倍氏の最大派閥・細田派会長就任について「年度替わりくらいで何らかの結論を出すんだろう」と、年明けの3月頃に「安倍派」が誕生するとの見方を示した。そうなると、次の9月の総裁選では“キングメーカー安倍”の発言力が増す。
総裁再選を目指す菅首相と後見人で現在のキングメーカーの二階俊博・幹事長には看過できない事態だ。
そうした状況で〈菅vs安倍〉の第1ラウンドのゴングが鳴った。東京地検特捜部が「桜を見る会」問題で安倍事務所の捜査に乗り出し、菅政権に近いとされる読売新聞とNHKがスクープ。「官邸の捜査情報リーク説」が流れた。
特捜部は安倍氏本人に事情聴取を要請し、野党は国会証人喚問を要求、年明けの通常国会で安倍氏は身動きが取れず、細田派会長就任も危うい。安倍氏を長く支えた側近はこう息巻いている。
「桜の問題を蒸し返したのはガースーとか二階、官邸の連中だ。そういうことなら、金輪際、政権を支えてやる必要はない」
だが、菅首相サイドが“安倍封じ込め”に成功したように見えたのも束の間、Go To 停止という大失策で今度は首相の足元から火の手が次々にあがり始めた。
※週刊ポスト2021年1月1・8日号