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左翼さえ転向させる「トランプ・チャンネル」が動き出した

パフォーマーとしては超一流(EPA=時事)

パフォーマーとしては超一流(EPA=時事)

 先週末、NEWSポストセブンでリポートした「いよいよトランプ『過去最大の反撃作戦』の狼煙が上がる」が大きな反響を呼んだ。トランプ大統領はまだ戦いをやめる気はなく、バイデン新政権にとって最大の脅威になるという内容だが、読者からは「ただの借金まみれのビジネスマンに何ができるのか」といった疑問の声もいただいた。ニューヨーク在住ジャーナリスト・佐藤則男氏が、今後のトランプ戦略について続報する。

 * * *
 ニューヨークのミッドタウンには、さまざまなエグゼキュティブ・クラブが集まっている。ハーバード・クラブ、イェール・クラブなどIVYリーグ大学の同窓会、ヨットクラブ、弁護士クラブ、その他にも有名なクラブがたくさんある。そのなかで、おそらく最も控えめでcozyな(こぢんまりした)クラブのひとつが、筆者がメンバーになっている記者クラブである。それでもホテルが付いていて泊まることもできる。地方からニューヨークを訪れるジャーナリストたちがよく利用している。

 筆者は長年、このクラブでたくさんのジャーナリストと交流し、生涯の友人も多く得た。ありとあらゆるテーマで夜遅くまで議論し、勉強にも仕事のヒントにもなった。実にcozyな(居心地の良い)場所である。ここで知り合った友人のP氏は、日本でも有名な雑誌のベテラン政治記者である。彼の幅広い知識にはいつも驚く。そのP氏と電話で話した。

 筆者はトランプ大統領について、「彼が嘘と強権を使った政治手法しかできないことは、今となっては皆が気づいているが、2016年にはヒラリー・クリントンはそれがわからず、大統領選挙で適切な反撃ができなかったのだろう」と言うと、P氏は「それは違う。ヒラリーはトランプの異常性を知っていたと言っている。トランプがどういう人間で、どういう大統領になり、何をしでかすかわかっていたと思う。彼女はトランプと同じくニューヨークを拠点にし、それまでに彼の乱暴な演説や態度を見ていた。しかし、それを選挙キャンペーンで活かせなかった」と話した。

「それはなぜか?」と聞くと、「論理や品位を気にしないトランプのスタイルに巻き込まれることを嫌ったのだろう。ヒラリーは自分が同じ土俵では太刀打ちできないことを知っていた。ヒラリーの側近は、あんな下品な男が勝てるわけがないと楽観視した。その時、トランプの勝利は決まった」と言う。だとすれば、ヒラリー氏はトランプ政権のリスクを知りながら、自らの品位を冒すリスクを避けたために負けたことになる。P氏は、「ヒラリーは怠け者だった」と批判する。そして、ヒラリー氏が予想した通りの4年間で、アメリカは同盟国や世界から信頼を失い、世界最大のコロナ被害を受けた。

 では、大統領を退いてからトランプ氏は何をするのだろうか。74歳という年齢を考えれば、政治的な野心には限界があるようにも見える。セミリタイアしてフロリダの別荘で暮らすという報道もある。しかし、それはおそらく間違いだろう。

 トランプ氏は選挙戦終盤から猛然と献金集めを始めた。陣営は「寄付したお金は1100%になって戻ってくる。あなたの寄付にはそれくらいのインパクトがある」といった詐欺まがいの宣伝メールまで送っていた。12月初旬の段階で2億ドル(200億円超)を集めたとも報じられており、現在はもっと集まっているだろう。選挙費用の補填や裁判に使っても十分に余る。これも報道されていることだが、トランプ氏のビジネスの莫大な借金の返済に充てられることを懸念する声も少なくない。同氏はこれまでも、慈善事業と称して集めた寄付金をビジネスや選挙費用に流用して問題を起こしている。賠償判決も受けている。

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