トランプ大統領と側近たちは、今もまだ「ホワイトハウスを去る」ことを前提にはしていないようだ。ニューヨーク在住ジャーナリスト・佐藤則男氏がリポートする。
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12月18日の金曜日、ホワイトハウスでは不穏な雰囲気で会議が行われたようである。CNNとニューヨーク・タイムズの報道によると、金曜日の会議には意外なメンバーが2人、参加していた。ひとりは弁護士のシドニー・パウエル氏であり、もうひとりは彼女のクライアントでもあるマイケル・フリン元国家安全保障補佐官だった。会議は大統領執務室で行われ、怒号も飛び交う大荒れだったようだ。
パウエル弁護士は、大統領選挙のさなかに「選挙に使用された投票機はベネズエラや中国など反米国家の影響を受けたメーカーが製造しているもので、トランプ氏に投じられた票が違法に改ざんされている」と主張したが、その根拠は全く示せなかった。アメリカのメディアも各州の当局者も、これを「100%捏造された陰謀論」と一蹴し、やり玉に挙げられたメーカーは、発言の撤回を求めて法的措置を示唆している。トランプ陣営も、さすがに彼女の主張はひどすぎると判断し、トランプ弁護団として正式に「彼女は仲間ではない」と発表して火消しに奔走した経緯がある。ところが、最近になって、トランプ氏は彼女と連絡を取り合っていたというのだ。
フリン氏は、ロシア疑惑などの事件に関係し、虚偽の発言や意図的に捜査をミスリードした罪に問われ、いったんは自ら罪を認めて司法取引に応じたが、司法省の介入で判決の言い渡しが再三延期され、ついにはトランプ氏の恩赦で無罪放免となった。要は、いわくつきの側近である。
会議でフリン氏は、選挙結果を受け入れないために、トランプ大統領が戒厳令を発動するべきだと主張したという。報道ではトランプ氏がそれを支持したかは明らかになっていないが、会議の出席者たちが、そんなことは無理だとフリン氏を押さえつけたようだ。