「ウイルス持ってるんでしょ?」「近づかないで」。心ない言葉に感染者は胸を痛める。ならば、いっそのこと黙ってしまえば……感染者の差別を禁じる条例案を公布・施行する自治体が現れるなど、「コロナ差別」が深刻化している。中でも懸念されるのが「都会差別」だ。7月に感染した都内在住の20代男性Mさんが言う。
「四国に住む両親は、ぼくが感染したことを近所に隠しています。やはり田舎なので、人の目が気になるようです。年末に帰省するつもりでしたが、親は『周囲の目があるから、帰ってくるな』の一点張り。東京からの来訪者が“疫病神”とされ、親まで住めなくなるような土地柄なんです」
都会ではあまり知られていないが、地方では「2週間ルール」という自主規制が広がっている。11月に岩手に帰省した60代男性のOさんが言う。
「父親の認知症が進行したとケアマネジャーから連絡があり、施設に入所させるために一時帰郷したんです。ところが『東京からの来訪者と接触した人は2週間施設に入れません』と言われて、2週間の足止めをくらいました。東京からヘルプで妻を呼ぼうとしたけど、自粛期間がさらに延びてしまうからがまんして、自宅で2週間、父の面倒を見ました。地方は少し神経質になっているように感じました」
11月に新潟県の実家に帰省した20代女性Sさんも、東京との違いに驚く。
「新潟にも『2週間ルール』があるため、無職の母が敏感になりました。PCR検査を受け、『陰性証明書』を持っていったのに『家の近くに東京ナンバーの車を駐車するな』『家から一歩も出るな』などと言われました。それほど周囲の目が怖いのか……後味の悪さが残ったので、収束するまで帰省するのはやめます」