コロナ禍のいま、病院は患者に「不安」を与える場にもなっている。もしも病院内にコロナウイルスが持ち込まれれば、基礎疾患を持つ高齢者を含む多くの患者に感染が拡大し、重症化リスクが増大する。院内感染に巻き込まれる懸念もあり「受診控え」が激増した。
だが、コロナが怖いからと受診を控えると、持病が悪化するなど健康を損ねてしまうのでは──と思う人も多いはずだ。
そんな思い込みを覆すのが、11月に健康保険組合連合会(健保連)が公表した「新型コロナウイルス感染症拡大期における受診意識調査」(速報版)である。
同連合会が全国の20~70代の男女4623人に調査したところ、「持病あり」と答えた3500人のうち、24.7%が緊急事態宣言中(2020年4~5月)に通院頻度を少なくするか、通院自体をやめていた。
持病別では、「アトピー性皮膚炎」と「花粉症以外のアレルギー疾患」が約40%と多数を占めたが、「胃炎など消化器系の疾患」「腎炎など泌尿・生殖器系の疾患」「糖尿病」などの慢性疾患でも、約20%の人が病院に行かなくなった。
さらに興味深いのは、通院抑制者のうち69.4%が、緊急事態宣言が解除されたのちも「とくに体調が悪くなったとは感じない」とし、7.3%は「体調が回復した」と回答したことだ。
一方、「体調が少し悪くなったと感じる」「とても悪くなったと感じる」は合わせて12.2%だった。感染リスクも考えれば、少なからぬ人が“病院に行かないほうが健康でいられる”ということを示唆する数字である。健保連の調査担当者が指摘する。
「体調の変化はあくまで患者自身の主観で、持病や体調不良の原因そのものが回復したわけではありません。ただし、患者自身が受診を抑制しても体調に変化がみられなかったと自覚したことは回答の通りです」