「世界で最も影響力のある100人」(『TIME』誌2015年)に選ばれ、「“ときめき”を感じるか問う」独自の片づけメソッドを解説した著書は世界42か国で1200万部を突破。自身が出演するNetflixオリジナルTVシリーズ『KonMari ~人生がときめく片づけの魔法~』は世界190の国と地域で配信され、2019年には番組がエミー賞2部門ノミネート。いまや“世界のKonMari”となった近藤麻理恵さん。
彼女をプロデュースするのは、夫の川原卓巳さんだ。7年間の会社員のキャリアを経て、2013年からは公私共にパートナーとして、麻理恵さんのマネジメントと「こんまりメソッド」をプロデュースしている。世界的な存在になった“こんまり”と移住先の米・ロサンゼルスでどんな生活を送っているのだろうか、川原さんに聞いてみた。
「それが、何も変わっていないんです。一番大好きな朝食は、納豆とご飯で、何か贅沢なモノを買うといったら、メロンとかちょっと高価なフルーツくらい(笑い)。
2人の娘と過ごす大切な時間は生まれましたが、金銭感覚とかは変わらないですね。昔、麻理恵さんに結婚の話を切り出すにも、指輪を買うお金がないからなかなか言えなかったんですが、その頃と基本の生活のスタンスは変わっていません。
麻理恵さんも、本がミリオンセラーになっても『何冊売れた!』とかあまり気にしないというか執着しないタイプなんです」(以下カッコ内、川原さん)
川原さんは一貫して妻・麻理恵さんへの尊敬の姿勢を崩さない。お互いに“さん付け”で呼び合っているのは麻理恵さんの提案という。
「彼女の親戚夫妻がそう呼び合っていて、最初は、『ふ~んそうなんだ』となんとなくでしたが、夫婦が敬意と愛情を持ち合うこの空気が心地いいと今ではわかりました」
コロナ禍でリモートワークになって、妻が自分より仕事がデキることがわかり、怒りを露わにしたり不機嫌になったりした夫がいる、という話も昨今よく聞く。どんどん有名になっていく妻に、嫉妬はなかったのだろうか。
「僕と麻理恵さんは、学生時代に出会いました。最初の出会いから7年後、28才で再会した時に、彼女はすでにベストセラー作家。もちろん、会社員の僕に比べて彼女の方が収入も何倍も多かったのです。
それなのに、彼女は天狗になることもなく、等身大でピュアなまま……一緒にいると、気持ちが温かく満たされていくというか。僕のつまらないプライドや、こだわりなんて持ち出すこともありませんでした。
アメリカでは、『彼女に会うと浄化される』『ポータブルな神社』とおっしゃる方もいるくらい(笑い)。それほど、近藤麻理恵という人は、強く繊細なアーティストなんです。幼いころから片づけを続け、片づけが人を幸せにすると心の奥底から考えている彼女には使命があります。そこに向かって進めるように、サポートしていくのが自分の役割だと思いました」
NetflixオリジナルTVシリーズ『KonMari ~人生がときめく片づけの魔法~』エクゼクティブプロデューサーも努める川原さんは、スタッフの人選や、番組で麻理恵さんが訪問する体験者のキャスティングも行っている。
「送られてくる応募ビデオを60本くらい見て、なるべく多様な属性や年齢、ライフスタイルの方に、こんまりメソッドを体験していただけるよう選んでいきます。1本15分くらいですが、なんて言ってるのか英語を確認しながら見ていくので1本1時間くらいかかってしまう。それでも麻理恵さんが良いパフォーマンスを発揮してもらうために欠かせないんです」
アメリカ移住を決めた時は、夫婦共に英語力には全く自信がなかったという。
「2014年に麻理恵さんの本がアメリカで出版されて大きな反響があり、年の半分は海外出張していました。当時0才児だった娘と一緒にいる時間がなく、子育てと仕事を両立するには、アメリカに住むのが最良の選択だとはわかっていました。ただ『英語ができない』という1点で躊躇していたのです。
でも2016年にアメリカでのある仕事の依頼をいただいて、麻理恵さんと『これにチャレンジしなかったら一生後悔するよね』と、同じ思いを抱いたのです。加えて、当時、勤務していた会社の社長から、『それは川原さんにしかできない仕事だから』と背中を押してもらい、退職して渡米を決断しました」
渡米したものの英語がほぼできないという状況を切り抜けられたのは、危機的状況だったからという。