応援自粛、無観客開催となる2021年の箱根駅伝。ただ、テレビ観戦するうえでは例年以上の激戦が期待できる。100年の歴史を彩ってきた名ランナーたちの激走を凌ぐ名勝負を見逃さないために、観戦のポイントを徹底解説する──。
他の強豪校からマークされる駒澤大・田澤廉(2年)は会見で「3区で区間新を出したい」と話した。大八木弘明監督がどの区間に持ってくるか目が離せない。
スポーツジャーナリストの生島淳氏は「勝負が決まるのは2区や5区とは限らない」とする。
「柏原(竜二、元東洋大、2009~2012年)や神野(大地、元青学大、2013~2016年)のように5区でスーパースターが生まれ、総合優勝にまでつながったのは、5区の距離が長かった時期(2006~2016年)で、特殊な時代だった。5区の距離が短くなり、再び総合力の時代に変わってきています。駒澤大の田澤が3区に意欲を見せるのもランナーたちの発想が変わってきた証拠。各区間の重要性は均等に近づいている。今回は1区から4区まではトップが目まぐるしく入れ替わる展開と考えられ、選手層の厚さが問われることになるでしょう」
大混戦のなか区間エントリーでどこに配されるか注目なのが、各校の粒ぞろいのルーキーたちだ。
1年生が鮮烈な箱根デビューを飾ったことは過去にもある。東京五輪マラソン代表の大迫傑(6位、元早稲田大、2011~2014年)は2011年にルーキーながら1区に抜擢され、スタート早々に集団を抜け出してそのまま区間賞を獲得した。前出・生島氏がいう。
「今回の1年生たちは例年になく質が高い。箱根予選会で日本人トップとなった順天堂大の三浦龍司は全日本1区でも区間新を出し、予選会日本人6位の中央大・吉居大和は5000mでU20日本新を叩き出した。他にも全日本4区で区間新の東海大・石原翔太郎、同5区で区間新の青学大の佐藤一世といずれも今シーズン、申し分のない結果を残しています」
1年前は全国高校駅伝で都大路を沸かせた選手たちだ。同大会のエース区間1区で区間賞を獲ったのは青学大入りした佐藤だったが、箱根では誰がスターへの階段を上るのか。
今回は沿道の観衆が大幅に減ると考えられる。大声援を背に2区を走った経験を持つ、現在は住友電工陸上競技部監督を務める渡辺康幸氏(元早稲田大、1993~1996年)は、「普段の練習に近い環境での大会になるのだと思うが、きつくなってから沿道の声援に背中を押してもらえなくなる。どういう影響があるかは本番を迎えるまでわからない」と話した。