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鴻上尚史 オールナイトニッポン時代を語る「解放区だった」

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『彼女のスマホがつながらない』作者の志駕晃さんと作家の鴻上尚史さんが「ラジオ」について語る

 志駕晃さんの『女性セブン』の人気連載小説をまとめた単行本『彼女のスマホがつながらない』が発売になった。新型コロナウイルスの感染が拡大するなかで、実際に発生した出来事やニュースを反映させた作品である。発刊を記念して作者の志駕さんと、同じくクリエイターとしてコロナ禍で芸術文化を守り続ける鴻上尚史さんが、この1年を振り返る。

〈志駕さんはニッポン放送の社員として勤務しながら、小説を発表してきた〉

鴻上:志駕さんはずっと会社員と作家の“二足のわらじ”ですよね? でも『スマホを落としただけなのに』は映画化までされた大ヒット作だし、今回の週刊連載だって締め切りがタイトだったというし、専業作家になろうという気持ちはないんですか?

志駕:実はぼく、会社がそれほど嫌いじゃないんです(笑い)。仕事は面白いし、多分辞めちゃうとずっと家にいて、アイディアが広がらなくなる。毎朝執筆してから会社に行くんですが、「この時間までに書き上げなきゃ」という締め切りがある方が、うまく書ける。だからステイホーム中は時間はたくさんあったのにまったく書けませんでした。

鴻上:確かに、会社にいた方が家にこもっているよりも小説のネタが探せそうですね。今回出版する小説のタイトルも“スマホ”ですが、志駕さんは昔からスマホやSNSが好きだったんですか?

志駕:好きというより、新しいジャンルを書きたかったんです。『スマホを落としただけなのに』を書いた当時も、スマホをテーマにした小説はほとんどなかった。新しい事例を取り入れれば、ぐんとオリジナリティーが出るんです。

鴻上:なるほど。そこらへんはぼくと同じで、『オールナイトニッポン』で鍛えられたんですかね?

〈ふたりはニッポン放送黄金期を支えたディレクターと出演者でもある。志駕さんはウッチャンナンチャンや中居正広らの人気番組を多数手がけ、鴻上さんは1983年から二部で1年半、1987年から一部で1年半、『オールナイトニッポン』のパーソナリティーを務めた〉

鴻上:よく覚えているのは、ディレクターから「いましかできない企画を出せ」と言われたこと。いまで言うなら『鬼滅の刃』にちなんだ企画とかこじつけでも何でもいいから“いま”にこだわれとよく教えられました。

志駕:ぼくもそういう訓練をさせられて、「今日起こったことで企画を1つ作れなかったら話にならないよ」と言われて育ちました。女子大生に流行しているものでもおじいちゃんの人気者でも何でもいいから、とにかくいまのものを企画として出せ、と。現在もその教えが抜けず、『彼女のスマホがつながらない』では「パパ活」を取り入れました。

鴻上:当時のオールナイトのパーソナリティーは、ビートたけしさん、とんねるず、デーモン閣下、中島みゆきさん。なぜそこにオレが……みたいな(笑い)。

志駕:大抜擢でしたよね。当時のオールナイトは、たとえ世の中的には無名でもディレクターが「この人は面白い!」と思ったら“独断と偏見”でドーンと使って、勝負できた。

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