病院に行くか行かないか──1年前にそんな迷いを抱く人はごく少数だったに違いない。「体調が悪くなったり、検査が必要だったりすれば病院に行く。そうでなければ行く必要なんてない」。それが当たり前だった。
だが、世界で猛威を振るうコロナは、そんな常識を一変させた。感染を恐れ、通院を躊躇う人が増え、「病院に行くこと」で健康を悪化させかねないとの不安が広がっている。
もちろん、がんや脳血管疾患など、継続的な治療を要する病気においては定期的に通院することが不可欠だ。だが、とりわけ慢性疾患において、日本では「過剰医療」が指摘される。
それでも「医師の話をたくさん聞かないと不安」という人の頼りになるのがオンライン診療だ。ナビタスクリニック川崎の谷本哲也医師(内科専門医)が指摘する。
「コロナによる時限措置で、初診からのオンライン診療が認められるようになりました。希望者は、オンライン診療を受け付けている医療機関に予約し、スマホなどを通じてテレビ通話で診療を行ないます。これにより、通院によるコロナ感染リスクを軽減しながら診察を受けられます。
ただし触診や聴診ができないので、症状がある場合『いつから、どの場所に、どの程度の強さや頻度か』など、できるだけ具体的で細かな情報を伝えることがポイントです。一定の手続きを踏めば、オンライン診療で処方された薬を郵送してもらうこともできます」
受診を控えることは体調面だけでなく、精神面にも好影響を及ぼす。都内在住の70代男性が語る。
「これまで地域の中規模病院にバスで週に1度通っていましたが、車内はいつも大混雑。病院の待合室にも人が溢れ、薬が処方されるまで何時間も待たされました。コロナをきっかけに思い切ってオンライン診療に切り替えたらコロナを怖がらずに済み、心が穏やかになりました。体調もよくなったと感じています」