2020年も残りわずか。今年も歴史学・人類学上の新たな発見が日本や世界で相次いだ。歴史作家の島崎晋氏が、2020年に明らかになった世界史上の重要な新発見を厳選した。
* * *
新型コロナウイルスに明け暮れた2020年は、全世界的に移動制限がかけられたことから、考古学的な発掘を始めとする現地調査・取材は低調に終わった。が、それでも世界史の解明につながる重大な発見がいくつもあった。
北欧の「バイキング」は混血集団だった
そんななか、世界史上の大発見としては、バイキングに関するものを取り上げたい。バイキングといえば8〜11世紀にかけて北欧を拠点に西ヨーロッパ全体の海岸部を席巻した勇猛果敢な集団として知られる。彼らのパブリックイメージは美しい金髪をたたえた白人で、「ゲルマン民族の純粋種」とも考えられてきた。
ところが、今年9月に科学誌『ネイチャー』に発表された論文によれば、最新のDNA分析の結果、バイキングの頭髪は亜麻色ないしは黒色に近い茶色で、狩猟採集民や南欧の農民、アジアの草原の住人など多様な祖先を持つ集団であることがわかった。前13世紀から前12世紀初頭にかけ東地中海一円を席巻した「海の民」と称された集団と同じく、バイキングも民族というより一個の社会現象に近かったのである。
ちなみにバイキングといえば、2017年付けの学術誌『American Journal of Physical Anthropology』に掲載された論文において、スウェーデンの首都ストックホルムからほど近いビルカに眠るバイキング戦士が「女性」と発表され、世界の歴史学界に衝撃を走らせたことがある。