新型コロナウイルスの世界的流行に翻弄された2020年が終わろうとしている。今年も歴史学・人類学上の新たな発見が日本や世界で相次いだ。歴史作家の島崎晋氏が、2020年に明らかになった人類史上の重要な新発見を厳選して紹介する。
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今年は全世界的に移動制限がかけられたことから、考古学的な発掘を始めとする現地調査・取材は低調に終わったが、それでも歴史の解明につながる重大な発見がいくつもあった。
アフリカにもネアンデルタール人がいた
人類の祖先に関する定説はほんの数年で訂正される。なかでも「サハラ砂漠以南のアフリカ人にネアンテルダール人の遺伝子は存在しない」との説はその好例だろう。
今年1月に学術誌『セル』に掲載された米プリンストン大学の遺伝学者ジョシュア・エイキーの論文で、アフリカ人にもネアンデルタール人のDNAが確認されたことで、現生人類の足跡がアフリカから外に出るだけでなく、その逆の流れも存在し、人類の進化の過程が双方向であったことが明らかにされた。
7500年前、ヨーロッパ最西部に移住したアジア人の家族
DNAからわかることは実に多い。今年6月、米ハーバード大学医学大学院らの研究チームが学術誌『サイエンス』に発表した研究論文によれば、イベリア半島南端のジブラルタルで発掘された7500年前の女性人骨から興味深い事実が判明したという。研究チームが彼女のDNAを分析したところ、イベリア半島に由来するものはわずか10パーセントで、残りの90パーセントはアナトリア(小アジア)に由来することがわかったのである。
このことはアナトリアを出た彼女がさほど遠い縁戚ではなく、彼女の両親、または直近の祖先が海を渡ってジブラルタルにやってきたことを示している。