ビジネス

人不足なのに人余り…「社内失業者」問題は解決できるのか

菅義偉首相(左)と平井卓也デジタル改革担当相。行政のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進するのがデジタル庁(時事通信フォト)

菅義偉首相(左)と平井卓也デジタル改革担当相。行政のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進するのがデジタル庁(時事通信フォト)

 働きアリの群れには一定割合の「働かないアリ」がいて、その働かないアリを取り除けば全員が働きアリになるのかと試みてみたら、やはり一定割合の働かないアリが出現するという実験結果がある。働く、働かないと単純に二分しつつも、それでは測れない何かの役割を「働かないアリ」は果たしているのではないかという仮説も立てたられているが、本当のところは分からない。人間の社会でこの「働く」「働かない」を可視化したらどうなるのか。ライターの宮添優氏が、会社にいるのに仕事がない「社内失業者」が可視化されたことで起きる混乱についてレポートする。

 * * *
 リーマンショック直後の2009年8月に有効求人倍率が0.48を記録するなど、不景気と「人あまり」の現実を嫌というほど見せつけられたことは、まだ生々しい体験として残っている人も多いだろう。ところがそれから数年で、有効求人倍率は「1」をあっさり超えて、2018年は平均で1.61を記録するなど、今度は深刻な「人不足」の様相である。第一次ベビーブーマー世代の一斉退職などが原因かと思いきや、現場を調査すると、そこにはさらに深刻な問題が出現していた。

「人は不足していない、むしろ余っている。でも、できる奴が足んないんですよ!」

 怒気混じりで筆者のインタビューに答えてくれたのは、都内の海運会社勤務・野老洋一さん(仮名・40代)。会社では数年前から、55歳以上の従業員を対象に「早期退職者」を募集していたが、応じたのは対象者のうち2割に満たない程度。多くが会社に居残ったという。その結果、会社に居るだけで何も仕事がない多くの「社内失業者」が現れた。そして、彼らの存在は、このコロナ禍でより浮き彫りになった。

「早期退職の対象者だったけれど辞めずに残ったある課長は、会社内にいても、どんな仕事をしているか、誰にもわからなかったし、何をしているのかなんて面と向かって聞けませんでした。ですがコロナで、ほぼ全社員がリモート勤務になったら何をしているのか分かって……いや、何もしていないことが分かったんです。課長はパソコンにログインした形跡すらなく、仕事を一つもしていなかった。同じような社内失業者の存在が他にも十数人判明して、会社としては、彼らに何をやらせるか検討するというプロジェクトチームを立ち上げることになったと言われています」

関連記事

トピックス

左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
9月に成年式を控える悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
悠仁さまが学園祭にご参加、裏方として“不思議な飲み物”を販売 女性グループからの撮影リクエストにピースサイン、宮内庁関係者は“会いに行ける皇族化”を懸念 
女性セブン
衆院広島5区の支部長に選出された今井健仁氏にトラブル(ホームページより)
【スクープ】自民広島5区新候補、東大卒弁護士が「イカサマM&A事件」で8000万円賠償を命じられていた
週刊ポスト
V9伝説を振り返った長嶋茂雄さんのロングインタビューを再録
【長嶋茂雄さんロングインタビュー特別再録】永久不滅のV9伝説「あの頃は試合をしていても負ける気がしなかった。やっていた本人が言うんだから間違いないよ」
週刊ポスト
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏(=左。時事通信フォト)と望月衣塑子記者
山尾志桜里氏“公認取り消し問題”に望月衣塑子記者が国民民主党・玉木代表を猛批判「自分で出馬を誘っておいて、国民受けが良くないと即切り捨てる」
週刊ポスト
「〈ゆりかご〉出身の全員が、幸せを感じて生きられるのが理想です。」
「自分は捨てられたと思うのは簡単。でも…」赤ちゃんポスト第1号・宮津航一さん(21)が「ゆりかごは《子どもの捨て場所》じゃない」と思う“理由”
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
2013年大阪桐蔭の春夏甲子園出場に主力として貢献した福森大翔(本人提供)
【10万人に6例未満のがんと闘う甲子園のスター】絶望を支える妻の献身「私が治すから大丈夫」オリックス・森友哉、元阪神・西岡や岩田も応援
NEWSポストセブン
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談【第24回】現在70歳。自分は、人に何かを与えられる存在だったのか…これから私にできることはありますか?
週刊ポスト
「週刊ポスト」本日発売! 食卓を汚染する「危ない輸入冷凍食品」の闇ほか
「週刊ポスト」本日発売! 食卓を汚染する「危ない輸入冷凍食品」の闇ほか
NEWSポストセブン