昨今、「募金」に対する関心が高まっているという。自身も毎年募金活動に参加している諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師が、募金に興味を持つ人が増えた背景を考察する。
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ぼくが代表を務めているJIM-NETでは、毎年チョコ募金を実施している。イラクの白血病の子どもたちが描いた絵をチョコ缶にプリントし、募金をしてくださった人にプレゼントするというもの。収益は、イラクやシリア難民の白血病の子どもたちの薬代になったり、国内では福島の子どもたちのために使っている。
今年は、チョコ缶を10万個用意した。コロナ禍のため例年より少なめだ。しかし、受付を開始して1週間でうれしい誤算に気付いた。なんと約4万個も申し込みがあったのだ。こんなにハイペースなのは、16年間やってきて初めてのことだ。
チョコレートを原価で提供してくれている六花亭や、缶をつくる工場、発送をしてくれている福祉作業所とも相談し、2万個を追加することになった。みんな快く引き受けてくれた。
それにしても、なぜ、こんなにも多くの人が協力してくれたのだろう。コロナ禍で自由に行動できない分、「募金」という形で社会のために何か役立ちたいという思いをもつ人が増えたのではないだろうか。
地方移住問い合わせが殺到
もう一つ、注目している現象がある。空前の移住ブームである。ぼくが住んでいる茅野市では、移住相談がこれまでになく多数寄せられている。市役所での窓口相談やオンラインでの相談にも応じている。毎年実施している移住体験住宅はコロナのため中止しているが、感染が沈静化したころを見込んで、古民家を改築したプチ移住体験住宅を準備しているという。
生きているといろんな困難に直面するが、「働く場」があり、「愛する人」がいれば困難な状況のなかでも生き抜けるといわれている。逆に言えば、「働く場」がないこと、「愛する人」がいないことそのものが、大きな困難になるということだ。
新型コロナウイルスの感染が広がりだした初めのころは、昨年と比べても自殺者は少なかった。だが、夏以降、急激に自殺者が増え始めている。一度失業した人がなかなか次の仕事が見つからない状況になったことは大きいと思う。
そんななかで、人とのつながりを求める人が出てくるのは、当然のことだと思う。寄付の増加も、地方への移住も、従来にない「らしくない」生き方の始まりだと思う。こうした行動バターンは、今後も増していくのではないか。