長引くコロナ禍にもかかわらず、不動産市場は表向きの数字だけ見ると新築・中古ともに売れ行き減とはなっていないが、実態は動きが鈍いという。この要因を探っていくと、購入者の年収による「コロナ格差」が顕著になっていた。近著に『激震! コロナと不動産』(扶桑社新書)がある住宅ジャーナリストの榊淳司氏がレポートする。
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首都圏の中古住宅(マンション・戸建て)が堅調に売れている。東日本不動産流通機構が発表している月例速報では、2020年11月における首都圏の中古マンションは件数にして前年同月比14.0%の増加。同じく中古住宅(戸建て)は同23.6%の増加であった。いずれも高い伸びである。ただ、マンション、戸建て共に価格については微かな上昇にとどまっている。
エリアでいえば、中古マンションなら神奈川県が大幅に伸びている。戸建てには大きなエリア差は認められない。
一方、新築マンションは不動産経済研究所などが市場の動向を発表しているが、概ね好調とされている。しかし、新築の場合はデータ作成の基本が売り主企業の自己申告に基づくものなので、実態を正確に反映しているとは言い難い。売り主企業は自社の開発物件が販売不調だと認めることはほとんどない。どんな場合でも対外的には好調だと広報するものだ。
私は東京23区と神奈川県の川崎市、さいたま市の浦和区で販売されている新築マンションの建築現場を隈なく調査して、物件別に評価を行った資産価値レポートをネット上で販売している。カバーエリアで販売中のほぼすべての新築物件は、3か月に一度ネットなどで販売状況をチェックしているのだ。
その肌感覚から申し上げると、都心エリアの高額物件はすこぶる動きが鈍い。また、遠隔郊外の価格が低廉な物件も、あまり動いていない。それなりに動いているのは、近郊エリアの一部、たとえば23区でいえば中野区や目黒区、品川区、江東区の湾岸エリアなどだ。しかし、好調というほどでもない。