新年恒例の箱根駅伝も、今回は記憶に残る大会になる。沿道の声援が自粛とされ、静かな箱根路で実力勝負の熱い戦いが繰り広げられることになる。『週刊ポスト』(2020年12月21日発売号)では、「史上最高の箱根駅伝」の主力選手と見どころを詳しく解説しているが、そこでも注目されたのが“スーパールーキー”たちの存在だ。
週刊ポストでは、スポーツジャーナリストの生島淳氏が、今回出場する1年生ランナーたちをこのように分析している。
「今回の1年生たちは例年になく質が高い。箱根予選会では日本人トップとなった順天堂大の三浦龍司は、全日本大学駅伝(11月)1区でも区間新を出しているし、予選会日本人6位の中央大・吉居大和は5000メートルでU20日本新を叩き出した。他にも全日本4区で区間新の東海大・石原翔太郎、同5区で区間新の青山学院大・佐藤一世と、今シーズンは1年生が申し分のない結果を残しています」
12月29日の区間エントリーでは、順天堂大・三浦が全日本大学駅伝と同様、チームに勢いをつける役割を担う1区に起用された。中央大・吉居、東海大・石原、青学大・佐藤は区間エントリーから外れたが、当日変更で起用される可能性が十分にある。
過去の箱根でも、大学での実績が少ない1年生が快走を見せ、そのままスターダムに駆け上がったり、チーム躍進の原動力になったケースは少なくない。
2009年には東洋大で5区に起用されたルーキー・柏原竜二が、トップから4分58秒遅れの9位で襷を受けると、前を走る大学を次々と抜き去った。先頭で往路・芦ノ湖のゴールへ飛び込み、東洋大を初の総合優勝へと導く立役者となった。東京五輪男子マラソン代表の大迫傑も、早稲田大1年だった2011年の箱根で1区区間賞を獲得。大迫の快走で勢いに乗った早稲田大は18年ぶりの総合優勝を果たしている。
そうしたサプライズもまたチーム構成が毎年変わる学生駅伝の魅力のひとつだ。今回の大会は、沿道の声援がないぶん、実力がそのまま結果に結びつくとも指摘されるが、その条件でも見劣りしないスーパールーキーたちの存在が勝負の行方を左右する展開が予想される。
スポーツライターの酒井政人氏も、生島氏が名前を挙げた三浦、吉居、佐藤に注目する。
「登録メンバーを見ても、今回は駒澤大が5人、東洋大、早稲田大が4人も1年生を加えているように、新人が有望な年だと言えるでしょう。なかでも順天堂大の三浦君と中央大の吉居君が注目です。今回の新人は、出雲駅伝が中止になるなど調整不足が心配されますが、順天堂大も中央大も予選会から勝ち上がってきたチームです。もちろんこの2人も走っています。初めてハーフマラソンを走った三浦君は全体5位、大学デビュー戦だった7月のホクレン・ディスタンスチャレンジ千歳大会でも3000メートル障害で日本歴代2位の記録を出しています。吉居君も予選会で全体10位に入っているし、日本学生陸上競技対校選手権(9月)の5000メートルで優勝している。
ほかには青学大の佐藤君も、全国高校駅伝の1区で区間賞を獲り、大学に入ってからは全日本の5区で区間新を出すなど実績十分。層が厚い青学大は前回の優勝メンバーから5人がエントリー登録されていますが、そうしたなか佐藤君は1年生で唯一メンバーに選ばれています」