正月を祝うのは一般の人々だけでなくヤクザも同じだが、過ごし方には独自の様式がある。暴力団取材に精通するジャーナリスト、鈴木智彦氏(フリーライター)と溝口敦氏(ノンフィクション作家)が徹底解説する。
鈴木:山口組分裂抗争が新型コロナの影響もあって膠着状態にあるなか、神戸山口組から分裂した絆會(旧任侠山口組)、山健組はすでに「事始め」を済ませ、六代目山口組もやる予定だそうです。
溝口:事始めは12月13日にやることが多いヤクザの恒例行事で、「なんで年末なのに事始めなんだ」とも言われるんだけど、もともと正月の準備を始める行事としてあるもので、京都の祇園など芸事の世界には今でも残っています。
鈴木:正月はかき入れ時で多忙になるから、一足先に正月を迎えておこうってことですよね。ヤクザの場合は、「親分、今年はお世話になりました。来年も宜しくお願いします」と組長に挨拶する。
溝口:そしてお礼金も包むと。組織にとっては金集めの場でもある。
鈴木:本来は餅だったんですよね。餅が餅代になって、お金を包むようになった。たとえコロナ禍でも事始めをやらないと組織の勢いが衰えていると思われてしまうから、面子のためにも集まるわけです。
溝口:昔はスポンサー筋の経営者なんかも来ていたみたいですが。
鈴木:地域の顔役や政治家なんかも来ていました。
溝口:あと、六代目山口組は年末の恒例行事として餅つきをやっています。
鈴木:2019年までは、やっていました。