韓国は良くも悪くも「日本に負けるな」「日本より上だ」という話が歓迎される。戦後最悪といわれる日韓関係の根幹もそこにあるのかもしれない。両国不和の原因となった徴用工訴訟は外交的、経済的な問題だが、そこから派生した日米韓3か国の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄するといった安全保障に関わる問題は、東アジアの地政学的リスクを高めるだけに国際的な問題に発展しかねない。
左派の文在寅政権が発足して以来、韓国は中国や北朝鮮にすり寄る姿勢が目立ち、日米との同盟関係を軽視している懸念がつきまとう。最近では、次年度の国防予算がついに日本を抜くとか、自前の空母を持つべきだ、といった軍備拡張を誇る発表や論調が相次ぎ、ともすれば「日本抜きの東アジア安保」を模索しているのではないかと疑いたくなる。
『週刊ポスト』(2021年1月4日発売号)では、日韓の国力を比較する特集を掲載しているが、そこでも分析している軍事力の比較は両国民とも正しく知っておくべきだ。国防費はほぼ同じ、兵力は徴兵制の韓国が2倍以上、いわゆる海軍力や空軍力でも物量ではほぼ肩を並べる両国の「本当の国防力」はどうなのか。軍事に詳しいジャーナリスト、井上和彦氏に聞いた。
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韓国軍の装備が日本の自衛隊と拮抗しているのは、韓国が日本を意識して装備しているからではないでしょうか。本来、韓国の仮想敵は北朝鮮のはずですが、北朝鮮との戦闘ではなく日本を意識した装備品が散見されます。また、潜水艦に「安重根」と命名したり(※韓国統監府初代総監だった伊藤博文を暗殺した犯人の名前)、揚陸艦に「独島」と命名したり(※韓国が不法占拠している竹島の韓国名)、本来友好国として連携すべき日本に対するデリカシーがまるでない。
日本側は無視していますが、これに頭を悩ませているのがアメリカです。朝鮮半島有事の際には日米韓が共同作戦をとらないといけないのに、韓国は日本に友好的ではない。アメリカの東アジア戦略にとって、日本列島は非常に重要です。ここを奪われれば、中国軍もロシア軍も障害もなく太平洋に出ていけるので、アメリカの西海岸すら危うくなる。しかし、朝鮮半島はそうではない。アメリカが極東で海兵隊と海軍の主力を日本列島に置いていることがその証左でしょう。だからアメリカは、韓国が日本に敵対することをやめさせたいが、なかなかそうならないのが悩みなのです。