漫才やコントなどで、鉄道にまつわるネタは以前から多いが、マヂカルラブリーが「M-1グランプリ 2020」で披露した姿は、つり革につかまりたくなくて頑張りすぎる様子を軸にした、予想外の角度のものだった。ライターの小川裕夫氏が、ツッコミの村上から揺れて当然な事例としてあげられた箱根登山鉄道は、実際にそんなに揺れるのか揺れないのかについてレポートする。
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12月20日にテレビ朝日系列で放送された「M-1グランプリ2020」で優勝したマヂカルラブリーは、決勝ラウンドで「電車内でつり革につかまりたくない」というネタを披露。激しく揺れ動く電車内で、無意味に踏ん張る様子をコミカルに演じて笑いをとった。
ネタ中、ボケ役の野田クリスタルは体を激しく揺らした。その様子を見て、相方の村上が「箱根登山鉄道もこんなに揺れてなかったけど」とツッコミを入れている。
村上が例示した箱根登山鉄道は神奈川県の小田原駅と強羅駅を結ぶ路線で、箱根湯本駅までは小田急の電車も乗り入れている。しかし、その先の箱根湯本駅-強羅駅間は急勾配や急カーブがあるので箱根登山鉄道の車両しか走らない。
「箱根登山鉄道の宮ノ下駅─仙人台信号場間と小涌谷駅─彫刻の森駅間には、80パーミルという急勾配の区間があります。80パーミルは、1000メートル進むと80メートルの高さを登る勾配です。箱根登山鉄道には、それほど急勾配の区間があります。また、急勾配だけではなく、最小半径30メートルという急カーブもあります」と話すのは箱根登山鉄道の鉄道部担当者だ。
この説明だけを聞いても、鉄道に詳しくないとピンとこないが、通常の鉄道ではおおよそ35パーミルを超えると急勾配と言われる。また、鉄道はその構造から急角度で曲がる運転は苦手だ。カーブの最小半径の基準は列車のスピードによっても異なるが、おおよそ最小半径250メートル以下になると急カーブと認識される。当然、勾配と急カーブは車両を大きく揺らす原因になる。しかし、後述する技術によって、乗客は大きな揺れを感じることはない。マヂカルラブリーがツッコミで演じたのは、あくまでも漫才のネタだ。
箱根登山鉄道は雄大な山岳風景を楽しめる鉄道として人気があり、1979年に同じく山岳鉄道として有名なスイスのレーティッシュ鉄道と姉妹鉄道提携を締結。日本語の駅名板を贈呈するといった形で交流を温めている。日本という枠を超え、世界にも名を轟かせる山岳鉄道でもある。