昨年、撮影が一時中断した影響で、年明けも放送が続く大河ドラマ『麒麟がくる』(NHK)。最終回は2月となるが、今後の見どころについてコラムニストで時代劇研究家のペリー荻野さんが独自の視点で解説する。
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大河ドラマ史上、初の年を越しての完結となる『麒麟がくる』。クライマックスへ向けて気になるのが「消えた女たち」問題だ。
ここで言う「消えた女」とは、主人公・明智光秀(長谷川博己)の妻・煕子(木村文乃)と織田信長(染谷将太)の正室・帰蝶(川口春奈)である。煕子は流浪の身となったときも光秀をしっかり支え、いつもニコニコ。実にできた女性だ。一方、帰蝶は自ら金を用意して、伊呂波太夫(尾野真千子)に力添えの交渉をする強い女。ふたりともこのドラマのヒロインともいえる存在だ。
だが、実際は彼女らの史料はほとんどなく、生没年や正確な名前すらもよくわかっていない。煕子は「お牧」などと呼ばれることもあるし、帰蝶は「お濃」「濃姫」と呼ばれることもある。その最期も不明のまま。まさに「消えた」感じ。煕子は光秀より先に病没したとの説もあるし、最近、私が読んだ小説『信長島の惨劇』(田中啓文・著)には、本能寺の変のあと、煕子は光秀の坂本城で光秀の家臣、明智左馬之助に殺されたとなっていた。
また、濃姫は斉藤道三の娘ということで、道三亡きあとは政略結婚の意味もないからと信長にさっさと離別されたという説もあるらしい。とにかくわからないことだらけ。1973年の大河ドラマ『国盗り物語』の松坂慶子はきりりとしたお濃、1992年の『信長KING OF ZIPANGU』の菊池桃子はおっとり系帰蝶とイメージもさまざま。だが、その分、これまでのドラマでは、彼女らのラストシーンもいろいろに想像され、劇的に描かれてきた。中には驚くべき展開を迎えた例もある。